最終調整

◇浦安DR×GR東葛（2024年12月7日＠柏の葉公園総合競技場） 

「一つひとつのプレー精度により具体的にこだわるようになりました。立ち位置、深さ、幅、それぞれの役割――それらをあらためて確認しました」 

11月17日から行われた一週間の福岡合宿（JAPAN BASE 福岡キャンプ 2024 Supported by JAL）のフォーカスを、プロップ金廉はそう振り返った。
帝京大学で大学9連覇を経験した28歳。大阪朝鮮高級学校では花園（全国高校ラグビー大会）にロックで出場。大学途中からフロントローに転向した経歴を持つ。
多くのフォワードポジションを経験した仕事人は、合宿直前、11月9日に行われた三重Hとのプレシーズンマッチに3番で先発した。リーグ開幕へ向けて、課題が明確になった。

「三重ホンダヒート戦はアタックでもディフェンスでもペナルティが多く、自滅する場面が目立ちました」

福岡合宿はそんな課題を克服する絶好機になった。一人ひとりのポジショニング、役割などを明確にしたのだ。

「合宿の練習内容そのものは普段と大きく変わりませんでしたが、『無駄なペナルティをなくそう』という明確な意識を持って取り組んだことで精度が向上したと思います。アタックではフェーズを重ねてもミスで終わらないことを意識しました。チームとして良い時間を過ごせました」

世界最高峰の強度で激しく戦いながらも、規律正しくプレーする――。これはリーグワンで戦うチーム、プレイヤーにとっての永遠のテーマだろう。オーストラリア代表活動から戻ったCTB（センター）サム・ケレビには、このテーマと向き合うときの信念がある。

　

敵は、相手ではない。

　

「練習でサム（・ケレビ）が話していたのは『敵は相手ではない』ということ。本当にそうだなと。無駄なペナルティやミスは、自分たちの甘さや意識の低さから生まれてくる。外的要因に左右されず、自分たちにフォーカスする重要性を再認識しました」

仲間の言葉をつい聞き流してしまうこともあるかもしれない。しかし、金廉には常に学びを受け取る鋭い感受性がある。気づき、あらため、そして前に進もうとする。
そんな金廉は今週、リザーブスタートとなる。先発を務めるのは、日本代表活動から戻った背番号3、愛称『TK』のPR竹内柊平。シーズン開幕直前になってポジション争いが熾烈になった格好だが、金廉の視点は高いところにあった。

「日本代表で身体を張ってきた3番の選手が味方になるなんて、こんな頼もしいことはないと思うんです。同じポジションなので『やっかいな敵が戻ってきた』と言われがちですけど、TK（竹内）が戻ってきたことはチームとしてプラスの要素しかない。それに、いつか必ずチャンスが巡ってきますし」

今週末は試合途中からバトンを受け取ることになりそうな金廉は、注目のプレイヤーについて問われると「いっぱいいますよ！」とチーム愛を覗かせた。

「まずバックスはフルバックのイジー（イズラエル・フォラウ）。10メートル走ったら観客を魅了できる選手です。

それに（今季新加入のロック）ウヴェも先発しますし、スタメンを勝ち取ったフランカーの大椙さん（慎也）もいます。

ただ同じポジションで言えばやっぱりTKですね。チームを引っ張る存在なので」

最高峰のラグビーにおいて、80分間フル出場するフロントロー（プロップやフッカー）は極めて稀だ。フロントローの役割は、リザーブ選手を含めた全6選手のプレーによって成り立っている。竹内柊平と金廉、2人の躍動に期待せずにはいられない。

「相手のNECグリーンロケッツ東葛は、ボールを回すのが得意で、ポイントに強い選手もおり、やりたいことをやらせてしまうと苦戦します。強いプレイヤーに簡単にゲインさせず、無駄な反則を避けることができれば、試合を優位に進められると思います」

12月22日（日）の開幕戦まで約2週間。最後のプレシーズンマッチが持つ意味は大きい。D-Rockersへ向けたメッセージにも緊張感が滲んでいた。

「いつも応援ありがとうございます。今月の開幕戦へ向けて『できること』『できないこと』を明確にするための大事な一戦になります。期待を裏切らないような試合をお見せしたいと思っています。ぜひ応援よろしくおねがいします」

キックオフは土曜日の13時。舞台は千葉・柏の葉公園総合競技場。天気は好天の予報だ。
チーム初のディビジョン1参戦。歴史的なシーズンへ向けた最終調整だ。

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