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2024-25シーズン トレーニングマッチ
「RockStarsがともした火」
◇NTTジャパンラグビーリーグワン2024-25シーズン
◇浦安DR 42-24 静岡BR(2025年4月11日)
そのタックルの連続は、まるでボクシングの連打のようだった。
後半30分過ぎ。11点リードの場面でのディフェンス。ウイング松本純弥が鋭く刺さった。相手を仰向けに倒す完璧なドミネートタックルだ。次はロック金嶺志。192㎝の巨体で相手の芯を貫いた。翌日の公式戦メンバー(第15節)らが見守るピッチ外から、歓声が沸き起こる。
RockStars(ノンメンバー組の愛称)がフェーズのたびに好守を繰り出し、フェーズのたびに相手を押し込んでいく。締めくくりはプロップ梁正秀。点火したロケットになった25歳が、強烈な一撃を食らわした。ターンオーバー。盛り上がりは、最高潮に達した。
4月11日。金曜日。
翌日にディビジョン1(D1)第15節を控えた浦安D-Rocks(浦安DR)が、ノンメンバー組による練習試合を行った。相手は静岡ブルーレヴズ(静岡BR)。その後第15節でチーム初のプレーオフ進出を決めることになる強敵だ。
とりわけ、フォワード陣にとっては特別な一戦だった。静岡BRはリーグ最強とも称されるスクラムを筆頭に、セットプレーを大きな武器としている。そんな「セットプレー文化」を誇る強敵を前に、フォワードとして燃えないわけにはいかなかった。
「フォワードのフォーカスは、やっぱりセットプレーでした」
前回のトレーニングマッチ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦)ではナンバーエイトとして活躍したプロップ坂和樹が言った。
「(相手が静岡BRなので)フォワードはかなり気合いが入っていました。スクラムは取り組んできたスタイルで一貫性を出そうとしていて、前半は相手に合わせてしまった反省点がありましたが、一試合通して修正できたことは良かったです」(坂)
試合は午後1時30分にキックオフされた。
この日存在感を放った一人がアーリーエントリーのFL佐々木柚樹(大東文化大学)。すでにリーグデビューを果たしている佐々木が、力強くゲインを取り、オフロードパスを繋ぐ。
同じく今季デビューを飾ったSH白栄拓也が小気味よくテンポを刻むと、センターで起用された石田大河が鋭く突進。ゴール前へと迫る。そして最後は、ロックの小島佑太がフィニッシュ。SO森駿太のコンバージョン成功で、7点をもぎ取った。
前半は静岡BRがスクラムで力を発揮。ペナルティの誘発から浦安DR陣に入り、2連続トライを浴びる。さらに守備時におけるラックの反則でイエローカードを受けて数的不利となり、さらに1トライを浴びる悪い流れ。ビハインドは12点(7-19)に広がった。
しかし、燃えていたフォワード陣がここで奮起する。
相手の自陣でのペナルティをきっかけに、敵陣でラインアウトのチャンス。そこから武器であるモールを形成し、呼吸を合わせながら低く力強く押し込んでいく。そして前半30分、最後にグラウンディングしたのは、序盤から急きょナンバーエイトとして出場していた坂和樹だった。(14-19)
明治大学時代は不動のナンバーエイトだった坂は、守備では鋭いタックルを決め、アタックでは守備網を力強く突破。プロップ転向2年目の今季、そのプレーは着実にスケールアップしている。
「僕はずっとボールキャリーが強みで、(S東京ベイ戦とのトレーニングマッチで)久しぶりにナンバーエイトをやって『やっぱりフィールドなんだな』と強みを再確認できました。それこそ(同期のPR竹内)柊平のような、スクラムも組めてフィールドプレーも良い、というのを目指しています。プロップはセットプレー、スクラムで信頼を得られないと出場できないので、そこを忘れずに成長していきたいと思います」(坂)
バックスも守備で魅せる。
WTBリサラシオシファは、独走してきた相手に対して迷わずハードヒット。フィジカル勝負を挑んできた相手に、強烈なタックルを浴びせた。前半33分に1トライを許すものの、これが静岡BRにとってこの日最後の得点となった。
浦安DRのエナジーは、ここから右肩上がりに加速していく。
前半のラストにビッグプレーを見せたのは、元慶應義塾大学主将のLO佐藤大樹。
敵陣でのアタック。ボールはハンドリングにも優れる坂和樹から司令塔・森へ。そして、ルーキー10番の森がクイックパスを放ると、空いたスペースにLO佐藤が仕掛けた。鋭く切り込み、優れた身体能力を活かして反転、そのままゴール下まで押し切った。パワーとスキルが融合したトライで、前半最後の一本を奪ってみせた。(21-24)
前半は3点差の接戦となったが、後半は静岡BRを圧倒した。
大きな理由の一つは、スクラムの勝利だった。
「(後半のスクラムの)感覚としては良かったです」後半はプロップとして出場した坂が言った。「相手はスクラム、セットプレーが強みで特殊な組み方をしてくると聞いていました。やはりチーム内で組んでいる感触とは違いましたが、探りながらやってみたことがハマりました。ハマ(HO濱野隼也)やケロ(PRサミソニ・アサエリ)が勝ってくれたことも大きかったです」
3点差(21-24)で迎えた後半。
43分、スクラムで後半最初のペナルティ。PR坂、HO濱野、PRサミソニ・アサエリをフロントローとして力強く押し込み、鬱憤を晴らすようにフォワード陣、そしてチーム全体が快気の雄叫びを上げた。
さらにHO濱野は得意のスティールでも貢献。このペナルティから得点機を迎えると、フォワードの連続攻撃からWTBリサラシオシファの突進で逆転(ゴール成功)。28-24とした。
一回のスクラム勝利で、フォワードのみならずチームの士気が高まったようだった。ノックフォワードを誘うダブルタックルも決まり、ムードは浦安DR優勢だ。
後半開始からスクラムハーフで出場の小西泰聖が、相手陣のスペースへキックを放り込む。
ここでノックフォワードを誘うと、直後のスクラムでもペナルティ。交替でリザーブ席に下がった小島が「ナイスフォワード!」と叫ぶ。
その後も敵陣22m内に居座って、スクラムではペナルティを誘発。アタック機会が増えるがハンドリングエラーや相手の好守でトライが生まれない。しかし64分に待望の後半2本目が生まれる。
奪ったのはアーリーエントリーの金侑悟(法政大学)。
「トライの前にフォワードがプレッシャーかけてくれたので、相手のフォワードが寄ってスペースが生まれて、ランでトライすることができました」(金侑悟)
前半のポジションは、大学時代に1年半ほど経験したことがあるというセンター。後半は本職のスタンドオフ。強みの「キックとスペースにボールを運ぶプレー」(金侑悟)を活かし、チーム加入後初となるトライを決めた。
みずからコンバージョンを決めて、リードは11点(35-24)。
冒頭のボクシングのラッシュのような連続タックルは、この優勢ムードのなかで起きた。闘志が闘志を呼び、猛タックルが猛タックルを呼んだ。そうして生まれたターンオーバーから右奥に入り、モールでこの日2本目のトライ。42-24とリードが広がった。
チームはこのリードを守った。後半は最後までトライエリアを明け渡すことがなかった。
「後半に無得点で抑えたことはチームとして収穫です」(坂)
「後半修正して、ノートライに抑えて終わることができました」(金侑悟)
RockStarsの思いが響き合い、選手自身に、そしてチーム全体に活力という火をくべた、熱く濃密な80分間だった。思いは伝播する。チームとして確実に前進した勝利となった。