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2024-25シーズン第14節
「転んでも起き上がる」
◇NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25シーズン第14節
◇浦安DR 22-33 横浜E(2025年4月5日@東京・秩父宮ラグビー場)
2022年に開幕したNTTジャパンラグビー リーグワンにおいて、今季以前にディビジョン1(D1)に昇格したことがあるのは3チーム。その昇格初年度における1試合平均失点は平均46点。一方、浦安D-Rocks(浦安DR)は、第14節終了時点でその数字を下回る39.6点だ。
そんなディフェンスの先頭に立つタックラーがいる。
フランカー(FL)の繁松哲大だ。
中学まではサッカー部。札幌山の手高校でラグビーを始めた26歳の体格は178㎝94㎏。大柄とは言えない福島県出身の日本人選手が、リーグワンのディビジョン1(D1)で背番号7を着る。そんな尋常ではないことを、今季6試合出場の繁松は毎試合、成し遂げている。
「僕が求められていることは主にタックルで、強いプレイヤーをシャットアウトすることです。(出場できている理由は)人よりも恐怖心があまりなくて、どんな強い選手でもバチーンといけることかなと。僕のような小さい選手は同じスピードでいけば負けるので、それをよりも速くタックルにいって(タイミング等を)ズラす、というイメージでいます」
リーグワン第14節。
スターティングメンバーは、タックラー繁松を含む12人が前週から入り、フレッシュな顔ぶれで秩父宮での横浜キヤノンイーグルス(横浜E)戦に臨んだ。正面スタンド脇には桜が咲き、時折春らしい温かな陽射しが差し込んだ。
ゲームキャプテンのHO藤村琉士が「前半良かった」と振り返ったのがスクラムだ。
最初の自陣ディフェンスで相手アタックをシャットアウトすると、相手ボールのファーストスクラム。低く鋭く相手に食い込み、押し切った。ペナルティの笛。2試合連続スタメンのPR竹内柊平が野獣のように吠えた。
さらに直後の前半6分でも2本連続となるスクラム・ターンオーバー。浦安DRの強力スクラムが力をみせ、ペナルティゴール(PG)から3点を先取した。
しかし横浜Eは、過去2季でベスト4を達成している強敵。
3点をリードした浦安DRに対し、タテ突進の連続攻撃をヨコ展開で締めくくる強烈なアタック。浦安DRもPR鍋島秀源、FL繁松らが鋭いファーストタックル。今季初先発したLOジェームス・ムーアも武器の守備力で押し返していく。
しかし近接戦からイーグルスが大外展開。前半10分に逆転トライ(ゴール)を取られてしまう。さらにペナルティから自陣に下がるパターンから失2連続トライ(前半16分、18分)を喫し、18点を追いかける展開となった。
「ペナルティは相手に流れを渡してしまいます。相手はラインアウトからのアタックがうまいイーグルスなので、そういう状況(ペナルティから下がって相手投入ラインアウト)をなるべく作らないようにしなければいけませんでした」(FL繁松)
前半28分には、『RockStars』(ノンメンバー組の愛称)の石田大河が警戒していた相手10番、田村優の巧みなロングキックに対し、WTB安田卓平がタッチを防ぐ好フィールディング。さらにはNO8トゥクフカトネにチーム最初のスティールが飛び出し、相手アタックを遮断。さらなる失点を防いだ。
すると前半32分に待望の初得点。
キック好調の愛称「オーツ」(SOブラック)がハイパント。これを相手が捕球できず。バウンドした楕円球を掴んだのはCTBサム・ケレビ。追いすがる相手に強烈ハンドオフ。そのままトライエリアを奪い11点差(10-21)まで詰め寄った。
ケレビとオーストラリア代表で共に闘ったことのあるイズラエル・フォラウも魅せる。前半34分には代名詞のハイボールキャッチに秩父宮が沸く。
今春に関西学院大学を卒業した松本壮馬は、すでにアーリーエントリーからこの日出場7試合目。前半37分にはこぼれ球を拾ってラインブレイク。狙い澄ました強烈ヒットも見せつけた。
11点差で折り返した試合は、相手の後半2連続トライ(後半3分、25分)でビハインドは23点まで広がった。グレイグ・レイドローHCはカムバックの難しさを噛みしめていた。
「今日は良いスタートが切れず、序盤から非常にもどかしい展開になりました。23点のビハインドから立ち直るのは厳しいものです。加えて、セットピース(スクラムやラインアウトなど)で相手にプレッシャーを掛けられなかったです。基本的な部分がうまくいきませんでした」(レイドローHC)
やはり立ち上がりからの失3連続トライが悔やまれる展開。しかし後半だけのスコアは昨季ベスト4の横浜E相手にイーブン(12-12)で、見どころは数多くあった。
後半5分には日本代表PR竹内柊平が、長所のボールキャリーでトライエリアへ突進。33歳の相手ディフェンダー、FL嶋田直人の熟練のトライセーブで得点は阻まれたものの決定力の一端をみせた。
後半19分には相手が自陣スクラムから左隅をブレイク。ここで懸命に戻っていたシェーン・ゲイツが相手の体勢を崩すアンクルタップ(相手のかかとを払って転ばせる守備技術)。決定的な場面でミスを誘った。
そして後半20分に田村熙がピッチへ。スタンドオフの位置に入り、兄・優との兄弟対決が実現。さらに1分後には橋本法史がリザーブから途中出場。トップリーグ時代からのリーグ50試合出場の節目を迎えた。
すると橋本&田村の熟練ハーフ団が、終盤の2連続トライを鮮やかに演出する。
23点を追う後半26分。竹内と変わった金廉がオフロードパスを受けて大幅ゲイン。ボールセキュリティに入った橋本に代わって中島進護がパスアウト
7次攻撃目で田村熙が強いボールキャリー。セコナイア・ポレが相手を排除したところへNO8トゥクフカが仕掛けて、待望のチーム2本目が生まれた。
試合は残り30秒。浦安DRは自陣にいた。
ディフェンスの健闘からノックフォワードを誘って呼び込んだ、最後のアタック機会だ。ここで自陣から展開すると相手がペナルティ。タッチキックで大きくエリアを前進した。
このラインアウトから、不屈のハードワーカー、LOローレンス・エラスマスがこぼれ球の確保からビッグゲイン。
突破口を開くと、折り返しでHO金正奎、SO田村、PRポレとパスに長ける3選手がつなぎ、切り札のケレビが右隅突破。
ラストを締めくくる3トライ目を奪ってみせた。
スコアは11点差(22-33)で12敗目。
試合後に取材ゾーンに現れたFL繁松は、擦り傷だらけの顔で「やるべきことをやるだけです」と話した。
「僕は相手の強い選手を自由にさせないよう、タックルでチームを盛り上げられるように。そこが起点になって得点や勝利に結びつけられたらと思ってます」(FL繁松)
転んでも起き上がり、そして再び前進する。不屈のタックラーたちは、それを何度も繰り返す。
ディズニーランドの生みの親、ウォルト・ディズニーは「本当の失敗は、あなたが挑戦することを辞めることだ」と言ったという。選手も、浦安DRも、挑戦を決して止めない。
4月12日の土曜日は、活動拠点のある千葉県(ゼットエーオリプリスタジアム)でのホストゲームだ。敗戦から立ち上がり、7勝7敗の5位コベルコ神戸スティーラーズに、一枚岩で再び挑戦する。