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トレーニングマッチ vs東京SG
強烈アタック&スクラム!トライ重ねた80分
◇NTTジャパンラグビーリーグワン2024-25シーズン トレーニングマッチ
◇浦安DR 29-31 東京SG(2025年3月15日@東京・府中朝日フットボールパーク)
セスナ機が轟音を響かせながら飛び立っていく。ここは、調布飛行場に隣接する府中朝日フットボールパークだ。周辺には公園やスポーツ施設が集まっており、ラグビーW杯日本大会の会場となった東京スタジアム(味の素スタジアム)にも近い。
今日は2025年3月15日(土)。
浦安D-Rocks(浦安DR)にとっては、今季2度目となるシーズン中のトレーニングマッチ(対外試合)。SH飯沼主将をはじめ前日の金曜ナイター(ディビジョン1第11節)に出場した複数メンバーが見守るなか、前日出場からは唯一、後半に途中出場したNO8ブロディ・マカスケルがナンバーエイトとしてピッチに入った。
トレーニングマッチの相手は、翌日(16日)にリーグ公式戦を控えている東京サントリーサンゴリアス(東京SG)。お互いに主力入り・復帰等をめざすエネルギー溢れるメンバーが中心だ。
心配された雨は降っていない。曇天の肌寒い気候のなか、桑井亜乃レフェリーの笛で正午にキックオフ。この日フル出場した実質1年目となる筑波大学出身のSH白栄拓也も、最初からエナジー全開で走り出した。
「(チームとして)まず相手よりもエナジーを出していこうと話していました。アタックに関しては、やってきたことが出せれば通用すると思っていたので、なるべくボールを継続することを意識しました」(SH白栄)
開始直後、背番号12で先発のルテル・ラウララが力強いボールキャリー。今季第9節(東京SG)戦ではフルバックで先発したユーティリティBK(バックス)だ。そしてこの日のフルバックは、背番号9の経験が豊富な小西泰聖。FB小西も序盤から安定感のあるキック処理、ロングキックで貢献していく。
開始6分。自陣ディフェンスで魅せる。
ルーキーながら今季公式戦に5試合出場のFL小嶋大士。この試合ではゲームキャプテンを務めた23歳が、ラックに仕掛けてターンオーバーを起こす。浦安DRでフランカーに転向した佐々木柚樹(アーリーエントリー)もスティール披露。浦安DRの守備力が光る。
すると13分だ。
敵陣左で最初の敵陣22mアタック。ラインアウトモールで力強く前進。相手のペナルティを引き出すと、先発HO松下潤一郎が正確なスローイングから2度目のモール攻撃。じりじりと押し込む。最後は今季開幕戦から6試合に出場したHO松下がグラウンディング。両チーム最初のトライを奪った。
さらに直後、前日のディビジョン1(D1)第11節で、開始直前のメンバー変更で緊急出場したNO8マカスケルが、チーム2本目のスティール成功。相手の強烈なアタッキング・ラグビーに粘り強く対抗する。
「今週チームとして『スピード』『スキル』は意識していて、今日はアタックで良いスピード、スキルを見せられたので、その部分は継続していきたいです」(HO松下)
松下がそう語ったように、浦安DRが誇るスピード感溢れる展開力をこの日も体現した。
前半17分、7人制代表としても活躍したWTB石田大河が鋭くゲイン。振り戻して展開。ここでCTBタナ・トゥハカライナがノールックの技ありパス。生まれたラインブレイクをふたたびトゥハカライナが仕留め、2連続トライで10-0と引き離した。
ここから東京SGが逆襲に転じる。
だがゲームキャプテンのFL小嶋はじめフォワード陣、「ディフェンスが武器」というスクラムハーフの白栄ら、浦安DRのフィジカリティ、ハードワークで守備網を破らせない。
前半の約35分間を無失点に抑えた。
再三の敵陣攻撃で東京SGが前半37分にチーム初トライを奪ったが、前半最後の得点は浦安DRだった。
ここでも元マオリ・オールブラックス(先住民マオリ系で構成されるニュージーランド代表)のCTBトゥハカライナがチャンスメイク。緩急をつけたラン&オフロードパスで突破を創出。
フィニッシュは、7人制代表を経験した両ウイングの連携から。右隅にポジショニングしたWTB松本純弥がWTB石田大河にパスを送る。相手を引きずりながら、最後は片手でWTB石田がチーム3本目を奪取した。
前半40分間のトライ数は「3対1」。
17-7とリードして、浦安DRが試合を折り返した。
この日、前半そして後半に大きな武器となったプレーがあった。先発HO松下が手応えを語った。
「今日はスクラムにはフォーカスしていました。相手のフロントローに細木さん(康太郎/東京SG)やアレックスさん(マフィ/東京SG)という強烈な選手がいたので、負けないように取り組んで、そこは良いスクラムを組めました。後半も良いスクラムを組んでいました」(HO松下)
HO松下は、スクラムは浦安DRの武器です、と力強く言った。それは後半のスクラムを見ても明らかだった。
スクラムを武器とする帝京大学でV4を経験したPR梅田海星(アーリーエントリー)も、この日自信を深めた一人だ。
「今日はスクラムで全体的に勝っていたイメージです。(後半のスクラムでは)ペナルティをほとんど取っていたと思います。あとは、エリアでどう相手にプレッシャーをかけるかなど、有利になった時にどんな判断を入れるかは大事かなと思うので、今後しっかり頭に入れてセットプレーに臨みたいと思います」(PR梅田)
後半開始後、途中出場の3人(HOキアヌ・ケレルサイムス、PRサミソニ・アサエリ、PR梅田海星)を最前列とした押し合いで、後半最初のスクラム・ペナルティ。
このスクラムPKからのエリア前進を足場として、チーム4本目のトライが生まれる。
さらに相手がペナルティを犯すと、波状攻撃からエリア隅を攻略。フィニッシュを演出する鋭いロングパスを放ったのはFB小西。流石のハンドリングでWTB松本純弥がトライを決めた。
これで浦安DRのリードは15点(22-7)。
東京SGも反転攻勢。スクラムは堅調だった浦安DRだが、ラインアウトの連携でミスが続いてボール保持率が伸びない。これを主な契機として東京SGが後半9、14分と連続トライを奪い、1点差(21-22)に詰められる。
この終盤戦で、引き続きスクラムが力を発揮。
後半出場のHO濱野隼也、PRサミソニ・アサエリ、PR梁正秀もスクラムプッシュでPK誘発。メンバーが替わっても堅固なスクラムは変わらず。「誰が出ても強い」スクラムで1点差のリードを守っていく。しかしアタックでは、ゴール目前でのノックフォワードなどがあった。
「アタックは良かったです。ただ敵陣で入った特に取れない場面もあって、やっている身としては『意外に競っている』という感覚でした。もっとトライを取れたというのが率直な印象です」(HO松下)
後半30分、相手のロングキックに背走させられたことが契機となって、相手が浦安DR陣内でアタック開始。フォワード戦で押し切られ逆転トライを許してしまう。(22-28)
だが浦安DRも終盤、鮮烈かつ強烈なトライを決める。
まずは敵陣左のラインアウトで、ジャンパーとなったLO佐藤大樹が確保。フル出場のSH白栄がテンポ良くパスアウト。PR梁正秀らが次々に力強い連続キャリーを繰り出す。
そしてCTBトゥハカライナのオフロードパスを受け取り、激しくぶち当たったのはFB小西だ。守備をぶち抜いてグラウンディングする、FB小西のトライが5本目。
逆転をかけた大事なプレースキックを託されたのは、法政大学の主将だったSO金侑悟(アーリーエントリー)。金が蹴り出した放物線はHポールを通って、見事に逆転。スコアは29-28となった。
試合時間は38分30秒。
1点を追う東京SGがアタック開始。ここで浦安DRにペナルティ。エリアは浦安DR陣の10m付近だったが、ここで東京SGがペナルティーゴールを選択。勝利にこだわった東京SGが、このラストプレーとなるショットを見事に決めて、再逆転。スコアは31-29となってノーサイドの笛が吹かれた。
トライ数は「5対4」で上回った練習試合。HO松下は「お互いに点を取り合う試合できつかったですが、楽しかったです」と話した。
「今シーズンはデビューという目標は達成できましたが、まだレベルが高いと感じているので、その部分をどれだけ詰められるかを意識しています。また試合に出られるよう積極的にアプローチしていきたいです」(HO松下)
アーリーエントリー組も躍動。それぞれに見せ場を作った。帝京大学からアーリーエントリーのPR梅田は「勝ちきれなかったところは反省です」とし、「スクラム、タックルなど通用するところもありますが一段階違うレベルも痛感している」と語った。
さらに「練習から一つひとつのスキルを磨いて試合で出せるように頑張ります。ルーキーとして勢いを与えられるようなプレーができたら」とリーグデビューへ意気込んだ。
次なるチャンスを掴むのは、一体誰なのか。浦安DRには、いたるところに闘志あふれるエナジーが満ちている。