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2024-25シーズン第8節
「前半の躍動。後半の苦闘。」
◇NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25シーズン第8節
◇浦安DR 22-44 BR東京(2025年2月15日@江東区夢の島競技場)
2試合連続だ。しかも今日はキックオフ直後からの途中出場だ――。
日本代表としてW杯2大会(2015、2019年)に出場したリザーブのツイヘンドリックは、2試合続けてスクランブル出場した。前節の三重ホンダヒート戦は、脳しんとうの繁松哲大に替わって前半20分過ぎから出場。
そして1勝6敗同士の対決となった第8節。
江東区夢の島競技場でのビジターゲームは、キックオフ直後にFLゼファニア・トゥイノナが負傷。そこからフルタイムまで、37歳の大型フォワードは走り続けた。
「この年齢になって80分プレーすることの負担は大きいですが、そのための準備はしています。どんな場面で起用されても役割をまっとうするマインドは持っています」(ツイヘンドリック)
キックオフ直後のファーストコンタクトで選手が負傷――。いきなり極めて珍しい事態に直面した浦安D-Rocks(浦安DR)だが、想定外のことで混乱し、浮き足立つメンバーではない。
「前半は良いプレーができて、すごくポジティブな結果を生むことができました」(グレイグ・レイドローHC)
最高気温15度。外套を脱ぐ観客が多数の中、まず序盤に右サイドでビッグゲインを披露したのは、この日28歳でリーグ通算50キャップ達成のWTB安田卓平だった。
レイドローHCが「彼(安田)は怪我が少なく、ステップが武器で、ハードワークもし続けてくれます。過小評価されている選手だと感じています」と賛辞を送れば、SH飯沼主将は「卓平さんは常に冷静で安定しています。多くのポジションもできますし、自分の仕事を確実にこなす、波のない、お手本となるような選手です」と絶賛。
その安田が得意のランから創出したチャンスで、まずは浦安DRがペナルティゴール(前半5分)で3点先制。ここから自陣22m内で3度にわたりディフェンスで"粘闘"。充実のスタートを切った。
しかし相手キーマンと予想していた一人、元チームメイトのリアム・ギルのスティール(旧ジャッカル)からカウンターに遭い、快足も誇るNO8ヤスパー・ヴィーセが追いすがるものの被2連続トライ(前半15分、18分)。7点ビハインド(3-10)を背負ってしまった。が、攻撃力ではこちらも負けていない。
前半27分、安定感が向上しているラインアウト。HO藤村琉士のスローからNO8ヴィーセが突進――と見せかけて、現役南アフリカ代表が短いパス。
送った先にいたのは現役オーストラリア代表のCTBサム・ケレビ。南アフリカとオーストラリアの豪華代表コンビから突破を生み出し、チーム最初のトライ。ゴール成功で同点に追いついた。(10-10)
その後相手の勝ち越しトライで5点ビハインド(10-15)を背負うが、追いすがる。
トライ目前となるショートキックで、相手10番がノーボールタックル。数的優位(15対14)を引き出すと、このペナルティのラインアウトからモールで直線一気。電車道のラストを最後尾HO藤村がグラウンディング。今季自身初トライを結束固いモールから奪った。
2戦連続のフルバック起用となったオテレ・ブラックが勝ち越しコンバージョン成功。17-15とすると、キックオフから身長2メートルのハードワーカー、LOローレンス・エラスマスが守備線突破。
混戦からCTBケレビが抜け出して第二波をぶつけると、サポートのCTBゲイツが第三波となってフィニッシュ。前節の独走トライを思い起こさせるセンターコンビのトライでリードは7点(22-15)に広がった。
だが、風下に立った後半、試練が待っていた。
「(後半劣勢だった理由は)まずブラックラムズさんが素晴らしいプレーをしたことが理由のひとつだと思います。私たちはハンドリングエラー、肝心なときのペナルティという2つの要素によって、その相手に勢いを与えてしまいました」(ツイ)
後半は自陣でのペナルティ(ラックオフサイド)などから相手モールで連続失点。2トライを浴びて7点(22-29)を追う展開になった。
さらに勝負所の後半23分にCTBケレビが相手頭部へのコンタクトで一時退出。ここでのペナルティから3失点し、10点ビハインド(22-30)となった。
一人少ない状態になってタフネスをみせる者もいた。SO田村熙は数的劣勢の場面でタックルを放ち、ノックフォワードを誘発。失点を防いだ。さらにエナジーダウンする仲間へ、経験豊富な元日本代表、ツイヘンドリックが円陣でメッセージを発した。
「(円陣では)とにかくポジティブなメッセージを出したいと思い、一週間の準備を信じよう、プロセスを信頼してひたむきにやろう、と伝えました」(ツイヘンドリック)
さらに劣勢を覆すべく、チームは次代の新人を投入する。
関西学院大学からアーリーエントリーしたユーティリティ・バックスの松本壮馬だ。後半31分(公式記録)にピッチへ入り、途中出場からリーグワンデビューを飾った。
「練習でもかなり良いパフォーマンスをしていましたし、先週末に行った部内マッチでもフィジカルの部分を見せてくれました。チームとして若い選手、良い選手を育てたいので彼(松本)を起用しました」(グレイグ・レイドローHC)
デビュー戦の舞台になった夢の島競技場は、松本の主戦場だった関西Aリーグの舞台と違っていた。観客者数はスタジアム最多となる3065人。ただ、思ったより緊張していない自分もいた。
「学生と違う雰囲気でしたが、緊張はしませんでした。思いきって勝負できる点差でもあったので、残り10分、アグレッシブにアタックする事だけを考えていました」(松本)
バックスのもう一人のリザーブはスクラムハーフの橋本法史。松本はその他のポジションをカバーする可能性があり「いろんなポジションで準備していました」(松本)。
今日は安田との交替で右ウイングに入った。
その松本が投入された直後。ラインアウトで相手のスローイングミスがこぼれ球となって、相手がトライライン目前で獲得する不運。そのまま追加の6本目(コンバージョン成功)を獲られてしまう。さらに1トライを浴び、14人の間にPGと2トライを奪われた。(22-44)
一矢報いたい浦安DR。
陽が傾いて気温が急降下するなか、終了間際にラストアタック。途中出場の竹内柊平がクイックタップで突進。80分を知らせるホーン。ここでウイングの位置に入った松本が右隅を疾走。しぶとくゲインを獲った。
しかし最後はラックでの倒れ込みで、レフェリーの笛。
22-44で7敗目を喫した。
前半は良い形で終えることができた。それは誰の目にも明らかだった。課題は0-29となってしまった後半40分間に残った。
「後半はディフェンスで後手に回ってしまい、TJ(ペレナラ)とリアム(・ギル)にかなり好き勝手させてしまいました。相手が勢いに乗り、自分たちはそれを覆せなかったです。細かいところはチームに持ち返って反省したいと思います」(SH飯沼主将)
東京サントリーサンゴリアス(東京SG)でもプレーした元代表のツイは、真の強豪のスタンダードを知っている。浦安D-Rocksが辿るべき次のステップは「80分一貫したプレーをすること」(ツイ)だと語った。
第9節はチーム初の山梨での試合。故郷への凱旋となる選手も少なくない。ゲームの相手は7位(3勝2分3敗)の東京SGだ。
東京SGはツイや田村熙らの古巣であり、昨年10月の今季プレシーズンマッチ初戦(28-35)では熱戦を繰り広げた。次節こそ一貫性のあるゲームを披露し、4カ月ぶりの再戦で成長をぶつけるときだ。