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2024-25シーズン第7
「辿り着いた通過点」

NTTジャパンラグビーリーグワン2024-25シーズン第7
◇浦安DR 3126 三重H202528日)

衝撃の56秒だった。

この日25歳の誕生日を迎えたSH飯沼蓮キャプテンが、トライラインの先に楕円球を叩きつけた。浦安D-Rocks(浦安DR)が、開始56秒で先制トライ。フォローしていた今季初出場のFL繁松哲大が笑顔で飛びかかる。13604人が詰めかけた日本ラグビーの聖地が、歓声で揺れた。
有言実行の56秒でもあった。

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試合前にリーダー陣が中心となり、キックオフ直後からフルパワーの肉弾戦を仕掛けると決めていた。最初の一分から行く。フィジカルが武器の相手に対してフィジカルで圧倒しよう――。

「三重ホンダヒートさんはフィジカルのチームなので、フィジカルで負けないこと。最初の1分からそれを示していこうと話していました」(飯沼キャプテン)

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今季6敗目を喫した先週(埼玉パナソニックワイルドナイツ戦)は、前半40分間のエナジー不足が大きな課題になった。前節の轍を踏むことはしない。学びをすぐに表現し、成果を出した。
三重Hは昨季のディビジョン1D1)昇格チームで、今季すでに2勝を上げている成長株だ。進境著しい強敵に前半15分にトライを奪われはしたが、浦安DRは一度掴んだ感触を離さなかった。
司令塔として君臨する田村熙が17分、ゴール目前にせまるタッチキックを放つ。ここから2度目のモールでヘルウヴェが2本目のトライを奪取。さらに26分だ。

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前節から4[i]が替わった先発の一人、HO藤村琉士がラインアウトのサインプレーで左ライン際を疾走。藤村にとってフィジカル勝負は自分の土俵。力強く前進し、さらにフェーズを重ねて2658秒にWTBカヴバティがトライ――。
と、ここはノックフォワード(旧ノックオン)。

しかし確実に数的優位を生み出すアタックだった。
スペシャルな選手によるスペシャルなプレーを続けていたわけではない。優れた設計図はあったものの、一人ひとりが「当たり前のこと」を精度高く実行した結果、この日、面白いように次々とチャンスが生まれた。

「選手一人ひとりが体を低くして、レッグドライブをして、ブレイクダウンをクリーンに出す――そういったシンプルなところをしっかりと出来たので、バックスでトライを取れたと思います」(SH飯沼キャプテン)

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再現性のあるアタックでキックパスを受け取ったWTBカヴバティは、前半32分、ミスをとりかえす3トライ目。蹴り出したのは今季初のフルバック起用となったオテレ・ブラックだった。

「今日はビジョンに優れたスタンドオフがピッチに2人いて(SO田村、FBブラック)、彼らの持ち味である指示力のおかげで、センターとしてかなりやり易かったです(CTBゲイツ)

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ディフェンスでも全員が主役になった。「全員を誇りに思います」というグレイグ・レイドローHCの試合後コメントには実感がこもっていた。
攻守に躍動したヘルウヴェ。怪我で途中交代したがドミネートするタックルもあったFL繁松。この日もスティールをみせたNO8ヤスパー・ヴィーセ。ピッチ際で好タックルを放ったWTBケレブ・カヴバティ。トライセーブの好守備を連発したCTBゲイツ。

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16点リード(215)で迎えた後半も、引き続きディフェンスが光った。
1トライずつを獲り合って14点リード(2612)の後半16分。トライエリアを背負って決死のディフェンス。三重Hによる重量FWの波状攻撃。5640秒、飯沼主将が相手フォワードのピック&ゴーをHポール下で止める。NO8ヴィーセがターンオーバーを試みる。

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ここで相手9番が勝負のワイド展開。WTB石井魁が飛び込むように止めると、相手をタッチに押し出したのはCTBゲイツだった。
さらに日本代表にデビュー済みの32歳、南アフリカ出身のハードワーカーは後半20分。ラインアウトの自陣ターンオーバーからCTBサム・ケレビが突破。ボールを受けると試合終盤とは思えぬスピードで約60mを独走。リードを19点(3112)に広げる殊勲の活躍をみせた。

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さらにこの日、特別な思いを抱いていた男たちが魅せる。

スクラムの最前線に立つフロントロー(FW1列)だ。三重Hには昨季までスクラム強化を担当していた斉藤展士コーチがいた。先発HO藤村琉士は薫陶をうけた一人だ。

「スクラムで押すことが恩返しだと思っていました。前半は要らないペナルティがあったので修正しなければいけないですが、後半のパックは押せていたと思います」(HO藤村)

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後半20分から途中出場した日本代表PR竹内柊平にとっては、トライアウトで目をつけてくれた恩人でもある。

「ノブジさん(三重H・斉藤コーチ)は師匠で、僕のスクラムはノブジさんが作ったといっても過言ではないです。今日は懸けていた想いが強くて、絶対にミスはできないなと。恩返しは押すことだと話していました」(PR竹内)

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19点リードの後半25分。敵陣の相手ボールスクラム。途中出場のフロントロー(HOキアヌ・ケレルサイムス、PRセコナイア・ポレ、PR竹内)を据えた88の勝負で、浦安DRの塊が強烈なプレッシャー。恩返しとなるスクラムプッシュで、相手から攻撃権を奪取した。

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勝利にはヒーローが大勢いる。
12点差に追い上げられた76分の相手ラインアウトだ。低空タックルも出来る200㎝のLOローレンス・エラスマスが、相手スローに指先で触れてクリーンキャッチを防いだ。その後スクラムで時間が削られ、三重Hの逆転シナリオが望み薄になった。
最後のトライは三重Hがプライドを示し、最終スコアは5点差(2631)。そしてフルタイムの笛。

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長く語り継がれるであろうD1初勝利を、全員で掴み取った。

チームは2022年に誕生し、壁にぶち当たりながら2年目に最高峰ディビジョンに昇格。3年目の今季開幕から屈辱を6度味わい、ついに202528日という日に到達した。

「ロッカールームではみんなホッとして嬉しそうでした。初勝利ですから」HO藤村はにこやかに言った。「でも、ここから2勝目、3勝目を狙っていこうという話もしていました」

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ここがゴールではない。
浦安D-Rocksがこの日、辿り着いたのは、輝ける未来の途中にある「通過点」だ。

「まだまだ要らないミスやペナルティがありますし、自分たちがもっとスコアできる場面もありました。しっかりとこの勝利を喜びながら、勢いに乗りつつ、反省するところは反省して次の試合に向けて準備していきたいと思います」(SH飯沼主将)

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まだ1勝6敗で12位の浦安DR。次なる相手は同じく16敗、11位のリコーブラックラムズ東京だ。ビジターゲームだが舞台は馴染みのある東京・江東区夢の島競技場。

チーム初のD1連勝へ。浦安D-Rocksの反撃は、これからだ。

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[i] HO藤村琉士/FL繁松哲大/CTBシェーン・ゲイツ/FBオテレ・ブラック