GAMEゲーム
レポート
REPORTレポート
2024-25シーズン 第6節 未来に繋がる21-21
◇NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25 第6節
◇浦安DR 26-53 埼玉WK(2025年2月1日)
前半40分間が終わった。
スコアボードの表示は「5-32」。
奪った5得点はモールからNO8ヤスパー・ヴィーセが仕留めた、前半36分のトライ。リーグ元年のチャンピオンを相手に、前半だけで27点ビハインドを背負った。
浦安D-Rocks(浦安DR)のグレイグ・レイドローHCは前半のプレーを「消極的」と感じた。相手は5戦全勝の埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)。3季連続ファイナルに進出している強敵だ。
相手に対するリスペクト(尊敬)はラグビーの普遍的価値。しかしリスペクトしすぎると弊害がある。元スコットランド代表の主将として、ニュージーランド代表や南アフリカ代表などにチャレンジしてきた指揮官は、積極性の大切さを身をもって知っていた。
敵地・熊谷スポーツ文化公園ラグビー場のピッチから、メンバーが引き上げてきた。指揮官は檄を飛ばした。
「ワイルドナイツという良いチーム相手に、リスペクトは必要ですが、(前半は)リスペクトをし過ぎて"待ち"の状態になってしまいました。自分たちをもっとリスペクトしなければなりません。消極的ではなく積極的にプレーして攻めていかなければいけませんでした」(レイドローHC)
今季5試合に出場する山梨学院大学卒のルーキーWTBケレブ・カヴバティ。チームに対する指揮官のカツを受けて、後半の40分間へ向けて思いをあらたにした。
「前半はスロースタートでした。自分たちはチャレンジしなければならないチームなので、後半はボールを持って、恐れず、思いきってプレーしようと話し合いました」(WTBカヴバティ)
そして後半が始まった。
浦安DRは前掛かりだった。開始直後から自陣からボールキープで連続攻撃をくりだす。
41分40秒過ぎ。
WTBカヴバティがキックカウンターから大幅ゲイン。相手カラーの青に染まった会場が湧いた。
「カウンターから目の前の相手に対して攻めるのは好きなので、あの場面は嬉しかったです」(WTBカヴバティ)
42分20秒過ぎ。停滞した場面で、どこからか「継続!」の声。そして展開攻撃。最後はノックフォワード(ノックオン)で攻撃は途切れたが、自陣から攻め上がろうとする積極性をみせた。
ディフェンスのエナジーも一段上がったようだった。
今季初先発のHO松下潤一郎は後半も引き続き的確なロータックル。指揮官が「改善がみられた」と評価したラインアウトにおいても、正確なスローで貢献した。
WTBカヴバティも「自分の課題だった」という言葉が嘘のように思える好タックルを続け、リーグ初代王者のアタックに抗った。
後半7分、トライを一本奪われた。
が、一度手にした積極性は失わなかった。
劣勢になったスクラムでペナルティを奪われた58分だ。自陣ラインアウトで相手がモールで押してくる。LOローレンス・エラスマスが、長い腕で絡みつく。ターンオーバーが起きた。ここから手薄の狭いサイドを急襲したのは、途中出場の竹内柊平だ。
「こちらがモールを押し返していなかったら相手も入ってこなかったと思うので、だからこそあの場面は抜けたのかなと思います」(竹内)
武器のボールキャリー能力を活かし、ライン際を突破する。SH飯沼蓮主将も加速してラックに到達。配球からこちらもリザーブ組、トゥクフカトネが突破。最後はCTBサム・ケレビのグラバーキックに歩幅を合わせていたWTB石井魁が、捕球し、仕留めてみせた(後半スコア7-7)
「ラインブレイクをしてもスコアに繋げられない試合がありましたが、今日はそこを取り切りました。それはウチ(浦安DR)にとって大きな財産になると思います」(竹内)
ただ埼玉WKがここから連続トライ(後半27、35分)。後半のみのスコアでは7-21となった。全体では12-53の大差だ。しかし簡単にトライエリアを譲ったわけではない。
65分40秒。トライを決めたWTB石井がトライ寸前の相手に飛びつき、スコアを阻止した。背番号16、今季新加入でこの日がリーグデビューの25歳、フッカーのキアヌ・ケレルサイムスは、トライラインを背負って決死の守備をみせた。
70分にはアタックでプレッシャーをかけて、相手のイエローカード(故意のノックフォワードによる)を誘発。積極的なアタックが15対14の状況を引き出した。
すると78分だ。トライライン目前のペナルティからケレルサイムスが突進。3フェーズ目でSO田村熙がパスダミー&オフロードパス。FB安田卓平がトライエリアに切り込んだ。(後半スコア14-21)
リスタートの相手ドロップキックが蹴られたのが79分20秒。ここから浦安DRが後半3本目を生み出す。
安田卓平が得意のショートステップで守備網を裂く。
ゲインを獲ると、ゲームチェンジャーとして効果抜群のNO8トゥクフカが元バックスらしい飛ばしパス。左隅で大きく前進。折り返しのスペースに走り込み、最後のランナーとなったのは、今季初出場となった28歳のプロップ西川和眞。
前身トップリーグ時代を含めて自身初となるリーグ戦初トライは、相手スクラムハーフを振り切っての約30m独走トライ。SO田村が難しいコンバージョンを成功させた。
後半スコアは21-21。
強敵を相手に、未来に繋がるスコアを刻んだ。
「後半に3トライすることができて、(後半スコアは)21-21の同点で終えることができました。アタック力を見せられたと思います。一方で、セットピースの一貫性は重要で、ラインアウトの改善は見られましたがスクラムはプレッシャーをかけられてしまいました。ペナルティを取られないよう改善が必要です」(レイドローHC)
「前半はもっとアグレッシブにチャレンジしていくべきでしたが、あのような形で終えてしまい、後半からスイッチが入りました。前半あれが出来ていれば分からない試合でした。そこはしっかり修正して次に臨みたいと思います」(SH飯沼主将)
次戦の相手は、チーム創設1年目は共にディビジョン2で戦っていた9位(2勝4敗)の三重ホンダヒート。昨季は現在の浦安DRと同じ「昇格チーム」という立場だったが、入替戦でD1残留を決め、今季はここまで2勝を奪っている。
飛躍を誓う者同士の対決で、狙うは今季初勝利。
経験という名の岩盤は、着実に強固になりつつある。