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2024-25シーズン 第5節「カムバック」
◇NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25シーズン第5節
◇浦安DR 22-50 神戸S(2025年1月19日)
獲られても、獲り返す。浦安D-Rocks(浦安DR)はビジターゲームで何度もタフにカムバックし、勝利へ手を伸ばし続けた。
初めてのディビジョン・ワン(D1)で開幕4連敗の浦安D-Rocks(浦安DR)は1月19日、今季3度目となるビジターゲームで、1勝3敗のコベルコ神戸スティーラーズ(神戸S)と相対した。
ノエビアスタジアム神戸に登場したホストチーム、神戸Sのモチベーションは高かった。今年は阪神・淡路大震災から30周年の節目。神戸Sのデイブ・レニーHCは「(震災を)風化させない責任がある」と語り、チームはメモリアルジャージーを着用。地元神戸での勝利に燃えていた。
だが浦安DRにも燃える男たちがいた。
リーグ初出場・初先発となったのがルーキーFL小嶋大士だ。今季プレシーズンマッチの初戦で先発を任されるなど、期待の大きかった185㎝105㎏の23歳が、待望のリーグ初キャップを飾った。
その小嶋の高校(山梨・日川高)先輩にあたるSH飯沼蓮キャプテンもまた、闘志を秘めてピッチに立っていた。
第3節から2試合でリザーブ出場。忘れかけていたことを思い出す機会になった。
「昔はもっとチャンスを見つけてワクワクしながら攻撃的にプレーしていたんですけど、キャプテンをやっていて、ちょっと真面目にやりすぎていたなと(リザーブの期間に)気づきました」
大卒1年目に初出場した練習試合では攻撃的な仕掛けを連発し、当時の首脳陣に即戦力であることを印象づけた。むかしは常に前を向いて、どんどんチャレンジをしていた。
「若い時にできていた『相手にいたらイヤなスクラムハーフ』というところに立ち返って、とにかくアグレッシブにプレーしようと。あとはフォワードをたくさん動かすところと、キックを上手く使いながらゲームコントロールすること。その3点を意識しました」
思いを新たにしてカムバックした飯沼主将率いる浦安DRは、前リーグ(トップリーグ)で2度優勝のD1常連チームと、後半途中まで接戦を演じた。
鮮烈なカムバックとなったのは、開幕節以来の先発となったWTB石井魁も同じだ。
前半3分にトライを許して7点を追う場面。フォワードがこの日出色だったモール・ディフェンスで相手を止めると、展開攻撃に転じた相手に対し、石井魁がスティール(ジャッカル)。快足トライゲッターが守備でも魅せた。
すると12分にその石井が守備を切り裂く。
相手のノックフォワード(ノックオン)から敵陣に入ると、兵庫県出身のPR金廉の内返しのパスを受けて石井魁がラインブレイク。1トライを返して同点(7-7)に追いついた。
ただグレイグ・レイドローHCが「ラインアウトの獲得率が低くディフェンスの時間が長くなっている」と語ったように、ここからラインアウトの獲得失敗もあり攻撃時間が伸びない。
前半28分には相手センターのパワフルな突進、2分後にはキックパスから連続トライを奪われ、ビハインドは15点(7-22)に拡大。劣勢ムードが漂った。
しかし獲られても、獲り返した。
SO田村熙が前半33分、角度のないタッチキックながらゴール前に迫るスーパープレー。直後のモール勝負でトライは取れなかったものの、ここからオープン展開。ブラインドウイングを入れたサインプレーから、石井が連続でトライエリアを奪った。
攻撃できれば獲れる――。そんな自信を深めたのか、前半終了前の被トライで17点ビハインドに引き離されても、追いすがった。
「今日はアタックする時間が少なかったんですが、キックゲームの判断は悪くなかったと思いますし、数少ないアタックの中でもチャンスを作れたシーンもありました」(SH飯沼主将)
後半最初のトライは、カムバックした主将の仕掛けが光った。
途中出場からゲームチェンジャーとなれる新加入のヘルウヴェが、渾身のスティール。NO8ヤスパー・ヴィーセの長短パスで、FLツイヘンドリック、WTB石井がそれぞれゲインを獲っていく。
さらに敵陣でフェーズ攻撃。ここでSH飯沼主将が逆サイドに仕掛けた。相手を引きつけ、タックルを浴びながら浮かせたパスを掴んだのが、新加入のNO8ヴィーセ。追いすがる者のいない独走トライを演出してみせた。
後半15分にはPGも加えて、浦安DRは7点差(22-29)に詰め寄った。一時漂っていた劣勢ムードはどこにもない。観客席からは神戸Sの奮起を期待する熱い声援が飛んだ。
しかし、終盤はセットプレーやフィールドプレーでペナルティが増え、攻撃機会を増やした神戸Sが3連続トライを決めた。
得点力はある。それはこの日攻撃機会が少なかったにもかかわらず「獲られても獲り返す」パターンを3度披露し、後半20分頃まで7点差(22-29)だったことが証明している。
ただ、勝利には届かなかった。レイドローHCは初参戦しているD1の難しさについて問われると、しばらく宙を見つめ、それから静かに口を開いた。
「(D1の壁は)一貫性です。80分間一貫したパフォーマンスを出すという部分です」
今季は第3節(横浜キヤノンイーグルス戦)など、後半20分以降に突き放される試合がいくつかある。一貫性の課題は承知しているが、克服には至っていない。キャプテンも同様の課題感を持っている。
「後半20分くらいまで勝ちが見えているような状況でしたが、そこから自分たちが崩れてしまい、ペナルティを重ねて点差が広がってしまいました。80分間、細かい当たり前のところをハードワークし続けられるようになれば、おのずと勝ちが見えてくる試合だったかなと思います」(SH飯沼主将)
後半23分から途中出場したトゥクフカトネは、今季ナンバーエイトにコンバートしたが、この日は旧ポジションのセンターでプレー。36歳のベテランは、終盤のディシプリン(規律)を問題視していた。
「タフなゲームになりました。ペナルティが多く、モメンタム(勢い)を止められませんでした」(トゥクフカトネ)
ここまで開幕5連敗。指揮官は「初めてのディビジョン1で苦しい闘いを強いられていますが、出来るだけ早く学び、次に備えないといけません」と厳しい表情で語った。
バイウィーク(休養週)明けには、カンファレンスB(6チーム)との交流戦が始まる。その初戦の相手は開幕5連勝の首位・埼玉パナソニックワイルドナイツ。現時点でいえば最も高い壁だ。
一貫性と規律を向上させ、高い壁を乗り越えられるか。バイウィークで得た時間を糧に、浦安D-Rocksは一枚岩で難所へ挑む。