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2024-25シーズン第4節「大きな前進」

NTTジャパンラグビーリーグワン2024-25シーズン第4
◇浦安DR 1422 BL東芝(2025111日@神奈川・Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu

神奈川・等々力。ディビジョン1D1)第4節の舞台に、開幕節以来3試合ぶりに戻ってきた田村熙の姿があった。昨季浦安D-Rocks(浦安DR)に新加入し、D1初昇格に貢献したスタンドオフ、司令塔だ。

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「僕が出ていなかった第2節、第3節は相手もパニックになっていて、逆転できる試合もありました。でも自分たちからバラけていって、結果的に大差がついてしまいました」

開幕3連敗。今週合流したチームは少し気落ちしているように感じられた。が、これまでD1強豪に所属していた田村は確信していた。

「自分たちからギブアップさえしなければ相当いやなチームになれます」

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第3節の相手は昨シーズン王者だ。開幕3連勝の東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)。田村にとっては古巣でもある。下馬評では相手有利。でもマインドセットの難しさは違う、と田村は考えていた。
マインドセットの難しさでいえば、むしろ格上とされる側の方が難しい。この試合は十分にチャンスがある。田村は試合前の円陣で、浦安D-Rocksのメンバーに発破をかけた。

前半は決定力の差が出た。

「若い選手が多いなか、チャンスを決め切るにはメンタルが重要です。そこはチームとして努力している部分ですが、今日はチームとして前進できたので加速していきたいと思います」(グレイグ・レイドローHC

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BL東京がチャンスを決めきる一方で、浦安DRはあとひとつのパス、ひとつの連携が繋がらない。
浦安DRが序盤の猛攻を相手7番のスティール(旧「ジャッカル」)で阻まれた一方、昨季チャンピオンは開始3分に先制トライを奪った。

いきなりの7失点。

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が、ここから15分以上スコアは膠着する。
24歳のFL武内慎が猛烈なチェイスで、相手のキックミスを誘う。背番号3を任されたPR金廉が、相手スクラムハーフにプレッシャーを掛けて攻守交代を起こす。初先発組が溌剌とプレーしていた。

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常に相手へのリスペクトを欠かさないBL東京の名将トッド・ブラックアダーHC。試合後、浦安DRの予想外の圧力について率直に語っていた。

「(浦安DRが)ここまで蹴ってくるとは思っていませんでしたし、アグレッシブなディフェンスも想定以上でした。浦安D-Rocksは私たちを良く分析したのではないかと思います」(BL東京、ブラックアダーHC

BL東京も前半21分、ラインアウトからの大外展開で2トライ目。直前に浦安DRも同様の大外展開でトライを狙ったが、トライエリアの奪取はならず。決定力の違いを見せられる格好となった。

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が、司令塔は落ち着いていた。スタンドオフ田村は戦況を俯瞰しながら、味方を鼓舞し続けた。

きついのは自分たちだけじゃない。ここでガマンができるかどうかだ――。

味方も応えた。前半終了間際。敵陣攻撃中にターンオーバーを浴び、逆襲を食らった。相手の快足ランナーに大きく切り返される苦しい場面。
ここで身長2mのローレンス・エラスマスがアクセルを踏んだ。そして飛び込むようにタックル。相手のゲインが止まった。起き上がって、ふたたび逆サイドへ歯を食いしばり、ディフェンスに走る。

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ここでスティール(旧「ジャッカル」)でプレッシャーをかけたのが、今季新加入のゲームキャプテンのNO8ヤスパー・ヴィーセ。全員で走り、前半終了前の失点を防ぎ、ガマンした。奮闘した前半スコアは012だった。

「きょう選手たちは、気持ちの部分では最高のものをみせてくれました」(レイドローHC

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指揮官が試合後に称えたアティチュード(態度)。昨シーズン王者を相手に演じた後半の接戦は、後半開始直後、中島進護のスティール(旧「ジャッカル」)から始まった。
後半9分には敵陣5mラインアウト。HO藤村琉士のスローからNO8ヴィーセがド迫力の突進。暴れながらトライエリアに猛進――。が、ここは相手の好守でトライはならず。

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ついに均衡を破ったのは、後半14分だ。

相手のラインアウトミスをHO藤村が捕球した。途中出場の竹内柊平が得意のピック&ゴーで前進する。2試合連続スタメンのSH橋本法史が相手反則(ノットロール・アウェイ)を誘うと、思いきってボールを大外へ。

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ボールは繋がる。田村熙。オテレ・ブラック。ヴィーセ。安田卓平と細かいパスをつないで、左タッチラインで鋭利なステップを切ったのは山梨学院大学出身のルーキー、ケレブ・カヴバティだ。その瞬間、観客席で見守っていたノンメンバーが総立ちに。この日最初のトライで後半17分に5点差(712)に迫った。

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勝てる――。

一つのトライで完全に空気が変わった。さらに直後の相手のシンビン(ハイタックル)で数的優位となった。
前節の横浜キヤノンイーグルス戦で課題となった終盤戦。ディフェンスで粘るものの、痛恨の反則(ノットロール・アウェイ)からのトライを浴び、ふたたび12点差ビハインド(719)に。

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が、崩れない。

ラインアウトからのスペシャルプレーが決まった。途中出場した松下潤一郎がスローイング。田村熙が鋭いカットパス。カットインで走り込んだのは、こちらもリザーブ組のイズラエル・フォラウ。誰もが仰け反るような大迫力のラインブレイク。大歓声を浴びながら相手を腰砕けにするステップを繰り出し、圧巻の独走でトライゾーンへ。

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浦安DRは、またも5点差(1419)に迫った。これが浦安D-Rocksの力だ。スタンドオフの田村に驚きはなかった。

「ほんの少しの声掛けだったりでガマンができれば、今日のような試合ができると分かっていました。今日で分かって頂けたと思いますが、やれる力は十分にあります」(SO田村)

ただ最終盤の78分にペナルティゴールを決められ、相手が3点追加。勝利と7点差以内のボーナスポイント(勝点1)を逃した。

「(練習したことの遂行力は)70点くらいでしょうか。『こういうゲームをしたら勝てる』ということが分かってきたと思います。あとは、ちょっとしたペナルティが差になったと思います」(SO田村)

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8点差(1422)で、勝利は逃した。ただ落胆の色はどこにもなかった。試合後、記者会見にやってきた指揮官は柔らかい笑みを浮かべていた。

「チームとして大きく前進できた試合でした。たくさん作ったチャンスを決め切ることができたら勝てた試合だったのが残念です」

成長できる部分はまだまだあるが、選手は最高のアティチュード(態度)を見せてくれた。

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「選手たちは気持ちの部分で最高のものを見せてくれました。物怖じせず、お互いを信じてプレーしてくれましたし、コーチ陣も自信を持って送り出しました。そこには何の文句もありません。これからは学びを生かして成長するだけです。自信を持って、怖気づくことなく勝ちに向かって進んでいきたいと思います」(レイドローHC

次戦の舞台は兵庫・ノエビアスタジアム神戸。コベルコ神戸スティーラーズ(13敗)との第5節で、待望の今季初勝利を狙う。

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