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2024-25シーズン第3節「突破口を探して」

NTTジャパンラグビーリーグワン2024-25シーズン第3
◇浦安DR 1240 横浜E202514日@福島・Jヴィレッジスタジアム)

4313秒。ルーキー何松健太郎が突破したランナーの足に絡みつき、止めた。立ち上がって逆サイドへ向かうと、そのままタックル2連発。後半開始直後、浦安D-Rocks(浦安DR)は、相手の強烈な連続攻撃を跳ね返し、しばらくインゴールを割らせなかった。

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試合後、記者会見場に現れたグレイグ・レイドローHC。その表情は、大敗した第2節の怒りを帯びたそれとは違ってみえた。

「(後半最初のディフェンスは)良い部分がたくさんあったと思います」と、レイドローHCは一定の評価をした。ただ手放しの称賛はしなかった。ただ、ディフェンスする時間が長くなるとペナルティが重なり、正しいエリアでプレーできなくなります。ゴール前で相手を止め続けることは難しいので、ペナルティは引き続き改善していきたいと思います」(レイドローHC

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202514日。

福島県双葉郡、新春のJヴィレッジスタジアムはラグビーの熱気に満ちていた。
Jヴィレッジは1997年、日本初のサッカーのナショナルトレーニングセンターとして開場。2011年に東日本大震災が発生すると福島第一原子力発電所事故の対応拠点に。休業期間を経て、2018年に再始動した。
そのメイン施設といえる「Jヴィレッジスタジアム」は観客席とピッチが近く、プレーの迫力をダイレクトに感じられる。試合前日に雪が降ったものの、キックオフを目前に控え、雪は無人エリアの芝生に残るだけ。ピッチは緑が眩しかった。

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関係者の努力で準備万端のこの日は、浦安DRにとって今季ホストゲーム2試合目。先に入場したのは、2季連続トップ4入りを果たしている強敵、2敗の横浜キヤノンイーグルス(横浜E)。どちらも初勝利に飢えていた。
浦安DRは初のディビジョン1で開幕2連敗だが、初めてゲームキャプテンを務める南アフリカ代表NO8ヤスパー・ヴィーセを筆頭に決然としている。
この日は新加入のFLゼファニア・トゥイノナ、そしてWTB松本純弥が記念すべきチームデビュー。LO中島進護は急遽のメンバー変更で今季初出場・初先発を果たした。

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「若い選手もたくさんいるなかで、自信を積み上げていくことが今後の課題です」

2連続スタメンのNO8ヴィーセはそう語ったが、この日出場した「若い選手」はスタートから果敢だった。

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今季初先発のCTB何松が相手の大型外国人FWを一撃で止める。こちらもルーキーWTBケレブ・カヴバティが、相手のキックパスに詰めて対面するランナーをシャットアウト。相手の強力ランナーにもビッグゲインを許さない。

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ファイトできている。力強い攻防が続く。手応えという小さな自信がひとつ、また一つ積み上がってくような序盤戦。それでも緻密なアタックで知られる横浜Eに前半8分、狭いサイドを攻略され、先制トライを浴びてしまった。
だが岩石は砕けない。NO8ヴィーセが渾身のジャッカル(攻守交代を起こす守備側のプレー)をくりだせば、殊勲はPR鍋島秀源、HO藤村琉士、PR竹内柊平を並べたスクラム。

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07で迎えた2度目のスクラムで優勢に。横浜E相手にスクラム・ペナルティを奪取したのだ。レイドローHCは、前半のスクラムについては「圧倒」していると感じたという。
この日は前節からディシプリン(規律)も改善がみられた。公式記録で15回だったペナルティはこの日、3分の210回)に減少。

ただペナルティからのエリア後退が、相手の好機になったことも事実だ。

「今日のように40点とられると試合が難しくなってしまいます。失点の多くは規律の乱れからきています。(規律の乱れから)侵入を許してしまいトライを獲られる、という流れでした。それは断ち切らないといけません」(レイドローHC

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前半21分にその規律の乱れが契機となって相手が2本目(前半21分)。014と突き放されてしまった。
この日反撃の拠点になったのは、やはりスクラム。敵陣ゴール前で強気のスクラム選択から、強気にプッシュ。ここで相手フォワードが故意の反則によってシンビン(10分間の一時退出)。優勢のスクラムから勝負の天秤が浦安側に傾いていく。

そして待望のチーム1本目は前半36分。

スクラムトライも匂わせながら、ゴール前スクラムを足場としてボールを左展開。クイックパスの名手・FB安田卓平のロングパスから、WTBカヴバティが左隅へ。獲るべきところで、トライを獲った。

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さらに14点ビハインド(721)で迎えた後半。冒頭の固いディフェンスから逆襲が始まる。

まず後半のキックオフ直後、横浜Eがターンオーバーから攻撃開始。間髪入れずにクイックスタートで得意の速攻を仕掛けてくる。勢いのままインゴールに雪崩れ込もうとする。だがゴールラインは割らせない。ペナルティをせず、守り切った。ピッチ外のメンバーから歓喜の雄叫びが響いた。

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堅守からムードを変えた浦安DR

逆襲に転じ、敵陣に入ると、強みとなったスクラムからSOブラックのロングパス。放った瞬間にトライを予感させるデザインされたアタックで、WTBカヴバティが2連続トライ。昨季4強チームを相手に、9点差(1221)まで迫った。

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昨季4強チームを相手に迫ったことも事実だが、終盤に突き放されたこともまた事実だ。
体力勝負に自信を持つ横浜E。この日何度もクイックスタートをしかけて体力を削った。
ハイタックルでこの日初めてイエローカード(10分退場)が出たことも一因だったろう。3連続トライ(後半273338分)を浴びてしまった。田村熙の兄・優(横浜E)が全てのキックを成功させたこともありスコアは1240に拡大。
そしてホイッスル。3敗目を喫した。

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「良い準備はできていました」(レイドローHC

良い準備を感じさせるスクラム、ディフェンス、プレーだった。ただし、ここからもっと先へ、上へと昇っていかなければならない。そのための重要なピースは「自信」であるとヘッドコーチは言った。

「このチームの成長の過程として一番大事なことは、自信を付けることです。『強い相手にも戦える』という自信を持って、臆することなく、若い選手も受け身にならずに攻めにいく姿勢が重要です。今日流れを変えるような重要な局面がいくつかありましたが、そこで、そういう姿勢は見せられなかったと思います」(レイドローHC

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すでに攻守の実力を証明し、ゲームキャプテンを務めたNO8ヴィーセ。「世界」の視野を持つ南アフリカ代表は敗因について「規律の部分が大きいと思う」と話した。

「不運な怪我もありましたが、そこを言い訳にはできません。引き続き自分たちのことを信じ続けたいと思います」

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闘いは続く。迎える第4節は111日(土)。相手は昨シーズンのチャンピオン。ビジターとして、開幕3連勝の東芝ブレイブルーパス東京と対峙する。頂点までの距離を推測できる絶好機だ。

自信をもって、臆することなく。チームは突破口を探して、前進を続ける。

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