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2024-25シーズン第2節「洗礼」

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25シーズン 第2
◇浦安DR 1962 静岡BR20241228日@熊本・えがお健康スタジアム)

「洗礼」という言葉の意味を調べると、そのひとつとして次のように解説されている。

【その後に影響を与えるような出来事に初めて直面すること。また、ある集団の一員となるために避けて通れない試練を受けること。】

これが最高峰ディビジョンの洗礼なのか。ディビジョン1D1)初参戦の浦安D-Rocks(浦安DR)が、初ホストゲームとなる第2節静岡ブルーレヴズ(静岡BR)戦でチームワーストの62失点。開幕2連敗を喫した。

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試合後、記者会見場に姿を現した首脳陣、グレイグ・レイドローHCSH飯沼蓮主将は、終始厳しい表情を崩さなかった。

「ラグビーというスポーツにおいて、基礎的なフィジカルで負け、さらにラインアウトの獲得ができなければ、試合を制するのは難しいのは当たり前のことです」(レイドローHC

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D1初勝利へ意気込んでいた。

開幕節からは先発3人変更。世界最凶のフィジカル王国・南アフリカの現役代表NO8、新加入のヤスパー・ヴィーセがチーム初先発。リザーブから急きょスタメンのSOルテル・ラウララ、山梨学院大学出身のルーキーWTBケレブ・カヴバティもスターターに入った。

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火の国・熊本で迎えた記念すべきD1初のホストゲーム。直前まで雹が降った冬空には浮雲が流れ、その影がピッチに陰影を落としていた。
そこへ今季初めてネイビーのホームジャージに身を包んだ浦安DRが登場。先発最年少23歳で福岡・久留米出身のPR鍋島秀源、宮崎県出身のPR竹内柊平、リザーブには福岡県出身の松下潤一郎、そして地元・熊本出身の橋本法史の姿もある。

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この日、不退転の覚悟で臨んだのは、スクラムにプライドを懸けるフロントロー(プロップ、フッカー)の3人だったろう。平均年齢25.3歳のPR鍋島、HO藤村琉士、PR竹内だ。相手は、前身のヤマハ発動機ジュビロ時代から強力スクラムでならす静岡BRだ。

「相手がフォワード勝負でくるのは分かっていました。フロントローは仲が良いので、試合に向けて、細かいコミュニケーションを意識して準備しました。前半は相手が上手かったですが、後半は修正できました」(PR鍋島)

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鍋島がそう振り返ったように、前半はフロントローに平均年齢31歳の手練れを並べた静岡BRが力強かった。相手指揮官の藤井雄一郎監督は「スクラムはしっかり組めた。全般的に良かった」と及第点を与えた。
では、スクラムではなく、ゲームの基盤となるもう一つのセットプレーであるラインアウトはどうだったか――。こちらも成功率54.5%(11本中6本成功)。安定性に欠けてしまった。

「今日の課題は、ラインアウトの獲得。それができないとディフェンスの時間が長くなります。まずは、そこの修正からです」(レイドローHC

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前半の浦安DRは、セットプレーやディシプリン(規律)の劣勢から、ペナルティゴール(PG)で失点したのち、5連続トライを浴びた。

前半20分過ぎまでは、新加入のLOヘルウヴェやPR竹内のジャッカルで抗戦。3点差(03)のまま拮抗。モールのディフェンスでも強力フォワードを誇る静岡BRと真っ向勝負。前半はモールトライを許さなかった。

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しかし、スクラムのペナルティなど反則が重なり、10点ビハインドで迎えた前半27分にLOローレンス・エラスマスがイエローカードを受けた。14人の間に2トライを浴びるなどして、5トライを献上。036という大差で前半を終えることになった。

11のタックル精度とディシプリン。そこが前半の点差になったかなと思います」(PR鍋島)

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しかし後半、途中出場組が火力を加える。

まずは後半0分からSH飯沼主将に替わって出場した熊本出身の橋本だ。後半開始からの起用理由を、スコットランド代表の伝説的スクラムハーフはこう説明した。

「今日はディフェンスの時間が長く、スクラムハーフがパフォーマンスを出しにくい試合内容でしたが、(それを承知で)流れを変えたいという意図のもと、替えました。プレシーズンも良いプレーを見せてくれていました」(レイドローHC

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後半開始直後、相手のノックオンから攻撃権を獲得。橋本が指揮するハイテンポ攻撃で敵陣ゴール前に迫ると、NO8ヴィーセが突進――と見せかけて、橋本はその裏にいたPR鍋島へ配球。福岡・輝翔館高校、福岡工業大学を経てきた背番号1が、粘り強いキャリーでチーム初トライを奪った。

「ヤスパーが引きつけてくれて、間があったので突っ込んだらボールをもらえてトライができました」(PR鍋島)

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鍋島は今年6月からオーストラリアに留学。「オーストラリアでフィジカル面の自信がつきました」(PR鍋島)。大事な場面で留学の成果を出してみせた。
7点を返して736とした浦安DRは、さらに同じく後半0分から出場のセコナイア・ポレも奮起。浅原拓真アシスタントコーチの修正も効き、スクラムの修正に成功した。
それでもフィジカル面の劣勢という大局は変わらず。その後に3連続トライ(後半81315分)を奪われて、ついにビハインドは50点(757)の大台に。

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それでも後半18分には敵陣に入ると、修正したスクラムを選択。安定したプラットフォームを作ると、FBイズラエル・フォラウを裏で入れるサインプレーからWTBシェーン・ゲイツがチーム2本目を奪取した。
ただ、この日15回あったペナルティが最後も響き、後半30分にLOエラスマスが2枚目のイエローカードを受けて退場。敗戦は確定的になった。

ただ、勝敗に関係なくパフォーマンスを発揮する者はいる。

50点差(1262)だった後半32分にCTBゲイツがジャッカル成功。さらに最終盤にはNO8ヴィーセがまたもジャッカル。南アフリカ出身プレイヤーがタフネスを見せると、自陣からロングキック。キックを追いかけていたのは、この日途中からスタンドオフ役も務めたウィング安田卓平。

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多くのタックルも放った万能バックスが相手ランナーを一撃ダウン。またもCTBゲイツがジャッカル。
このターンオーバーから速攻したのは熊本西高校出身の橋本だ。さらに相手反則からのFW攻撃で、スクラムで奮闘したPRポレがゴールラインに突進。チーム3本目を奪い取った。

14人で最後まで闘い続けた。
だが1962がファイナルスコアだ。それが直視しなければならない現実だ。

「まずフィジカルの部分で相手に勢いに乗らせてしまいました。チャンスの時間もありましたが、セットプレー、ラインアウトでペースを掴めず、一方的な試合になってしまった印象です」(SH飯沼主将)

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洗礼。その後に影響を与えるような出来事に初めて直面すること。また、ある集団の一員となるために避けて通れない試練を受けること――

ディビジョン2にいた昨季は、この試練を味わう権利すらなかった。
試合後の記者会見でSH飯沼主将は厳しい表情を崩さなかったが、そこに悲嘆の色はなかった。

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