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「収穫と反省と」
◇NTTジャパンラグビーリーグワン2024-25シーズン プレシーズンマッチ第3戦目
◇浦安DR 17-33 三重H(2024年11月9日@浦安Dパーク)
千葉・浦安Dパークの出入口前を通りかかった親子連れが、活気に満ちた様子に足を止めた。
澄みわたる11月の青空に、ウォーミングアップの声が響き渡っている。ファンが次々と入場していき、入場口のかたわらにはキッチンカーが並び、行列が出来ている。
これは浦安D-Rocks(浦安DR)の2024-25シーズン、プレシーズンマッチの第3戦。同じく最高峰ディビジョン1(D1)所属の三重ホンダヒート(三重H)を迎えた一戦は、練習試合というよりは華やかなスポーツイベントだった。
広大な2面のグラウンドに足を踏み入れると、浦安DRの出場予定メンバー約35名が最終チェックを行っている。
勝利したS東京ベイ戦からは、PR金廉、WTB石井魁が先発の変更箇所。
ゲームをコントロールするハーフ団は引き続き、チーム創設以来の主将であるSH飯沼蓮、そしてSO田村熙だ。
陽射しに輝く芝生の向こう、反対サイドには三重県からやってきた三重Hの姿が。イタリア代表を率いた経験を持つキアラン・クローリーHCのもと着実な成長を遂げている強豪で、今季からは浦安DRのスクラム強化に尽力してきた斉藤展士コーチも指導陣に加わっている。
観客席も大盛況。チーム創設当初のプレシーズンにはあまり見られなかった学生グループの姿もある。そして熱戦への期待が最高潮に達した正午、キックオフの笛が鳴った。
「前半、ディフェンスが良かったです」(HO藤村琉士)
そう感じたのは3戦で先発フッカー(HO)を任されている藤村だけではなかった。後半メンバーとして見守っていた新加入のスクラムハーフ橋本法史も「良い形で試合に入った」と感じた。
スタートから、ディフェンスが冴えていた。
三重Hがボールを確保して波状攻撃をしかけてくる。浦安DRは2人掛かりのダブルタックル。前進を許さない。ついには相手の反則を誘発して、粘り勝ち。ディフェンスの勝利から敵陣へ進んだ。
「アタックについても前半は準備したプレーが決まっていました」(SH橋本)
敵陣で最初のチャンス。ラインアウトからゴール前に迫ると、スタンドオフ田村熙が移動攻撃。アタックサイド転換からFB安田卓平がつなぎ、最後はランスペースを見つけたトライゲッター・石井魁が先制トライ。開始2分で先制パンチに成功した。
続いて、スクラムからのサインプレーが炸裂。
まずトライした石井魁がライン参加。ボールを受けた田村熙が目の前に生まれたギャップを突破。ボールを繋いで、左隅でケレブ・カバヴディがチェンジオブ・ペースで連続トライを奪った。
さらに注目のスクラム・バトル。
先発HO藤村、そして金廉と梁正秀の両プロップにとっても、スクラムは常に負けられぬ戦いだ。そしてこの日2度目の自軍投入スクラム。力強くヒット。グイッと8人一体のプレッシャーを与えた。
「スクラムは僕らのやるべきことが出せました。あの場面は自分たちのスクラムを組み、プレッシャーを与えて(ペナルティを)取れました。そこは良かったです」(HO藤村)
その一方で三重Hのスクラムの力強さも感じた。スクラムを通して、昨季まで浦安DRで指導を受けたスクラムコーチの存在を感じた。
「ヒットで勝ったはずなのに、まとまっていました。後ろ(ロック、フランカー、ナンバーエイト)からの圧力も感じましたし、さすがノブジさん(三重H・斉藤展士コーチ)だなと」
しかし前半は一進一退。浦安DRは課題にしていたキックオフサイドなど要所で反則をしてしまい、たびたび自陣方向に後退。三重Hが強力フォワードを起点に2トライを加え、前半は12-12のドローとなった。
「ペナルティがあって敵陣でトライが取れませんでした。リズムが作れず慌ててしまい、さらにミスをしてしまう連鎖はありました。ただディフェンスは出来ているし、そこを直せばより良くなります。収穫はありました」(HO藤村)
風下となった後半は、ふたたびキック時のオフサイドから劣勢に。
キック時のオフサイドは、キッカーの前方にいるオフサイドのプレイヤーが「後退しようとしているように見えていなければならず、そうでなければペナルティを受ける」(「【2024年6月17日通達】競技規則の改正」より)。後方へ戻ろうとするアクションが必要になっている。
この反則から三重Hがゴール前スクラムの好機。後半出場のPR鍋島秀源、HO松下潤一郎、PRセコナイア・ポレを中心にスクラムは拮抗したが、相手8番に突進されて後半2分、勝ち越しトライを許した。
浦安DRは風下の不利もあって、エリアの前進に苦しんだ。それでもセンターから8番転向のトゥクフカ トネが十八番のジャッカルを決めるなどした。が、後半20、28分に三重Hが連続トライを決めた。
浦安DR、後半最初のトライは21点ビハインド(12-33)の後半33分だった。
「あそこはスペースがあったので勝負しました」
そう振り返ったのは途中出場のSH橋本だ。日野RD時代からテンポ形成と機敏な仕掛けをみせていたアタッキングハーフが、中盤で狭いサイドを急襲。最後は途中出場のFB石田大河のスコアに繋げた。
「スペースにアタックするところとテンポを出すところは自分の強みで、あの場面、ショートサイドを攻めて一本獲ったところは良かったです。キャプテンに蓮(飯沼)がいてヘッドコーチがG(グレイグ・レイドロー)がいて――お手本があるので自分も成長していければ」(SH橋本)
終盤のタフな場面で中島進護がさすがのジャッカルを決めるなど、終盤は攻勢ムードを維持した。それでも最終スコアは17-33でノーサイドを迎えた。
「チームとして攻めるところ、エリアを獲るところをハッキリさせて、(今日のような)三重ホンダヒートさんの速いプレッシャーがあっても正確性をもったプレーができれば、もっと得点ができると思います」(SH橋本)
今季新加入した28歳の橋本は、浦安DRでこそ輝きたいと願っている。仲が良くてフレンドリー。リーダー任せではなく「みんなでやろうという意識があるチーム」(SH橋本)。その一員として、今季D1のトップ6へ向かって邁進したい。
次のプレシーズンマッチは約1ヶ月後だ。
12月7日(土)13時キックオフのNECグリーンロケッツ東葛戦。舞台は千葉・柏の葉公園総合競技場となる。