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2023-24シーズン順位決定戦第2節「連覇達成。その先へ」
◇NTTジャパンラグビーリーグワン2023-24シーズン順位決定戦第2節
◇浦安DR 48-28 GR東葛(2024年5月6日@宮城・セイホクパーク石巻)
「杜の都」宮城県仙台からJR仙石線の快速電車に乗り、沿岸部を約1時間北上する。日本三景の「松島」も越えていくと、北上川の河口に位置する石巻のまちが広がっている。
ディビジョン2(D2)優勝決定戦。
風光明媚な石巻を舞台に、勝てばD2連覇となる暫定1位の浦安D-Rocks(浦安DR)は、暫定3位のNECグリーンロケッツ東葛(GR東葛)と、順位決定戦第2節(最終節)で相まみえた。
この「浦安DR×GR東葛」の一戦が、NTTジャパンラグビーリーグワンの2023-24シーズンのレギュラーシーズン最後の試合。この一戦の結果をもってリーグの全順位が確定する状況だ。
会場となったセイホクパーク石巻は、海から涼風が吹きつけていた。
しかし気候は温暖。緑がまぶしい芝生席には、レジャーシートを広げてスタジアムフードを楽しむ家族連れの姿がある。優勝決定戦の戦況とは好対照に、セイホクパーク石巻はのどかだった。
しかし正午のキックオフ直前。
前節から先発8名が替わった浦安DRメンバー [i] 、そしてGR東葛が入場すると、会場は戦闘モードに一変した。紺色のファーストジャージーに身を包んだ浦安DRメンバーは、風下に陣取った。バックスタンドのリーグ旗が浦安DR側に激しくなびいている。
風下スタートになったが構わない。むしろ前半リードして折り返し、風上の後半に有利な状態でスタートしよう――。
チームのそんな意気込みは、現実になった。
「前半は風下で難しいプランのスタートになりましたが、キックを使ったり、フォワードがモールを使ったりして流れを掴んでくれました」(SH飯沼蓮主将)
序盤の主役はGR東葛。先制トライを許して7点を失った。が、ここから相手がモールの守備などで反則を重ねると、浦安DRが前半7分に歓喜する。
約1カ月半ぶりの出場となったメンバーたちが、躍動した。
まず強風のなかでリーグ戦第9節以来の先発となったHO藤村琉士が、ラインアウト後方へのスローイングを成功させる。サインプレーでSO田村熙、最後は同じく1カ月半ぶり出場のWTB石井魁が突破&フィニッシュした。
まず2点差(5-7)とした浦安DR。
前半11分、常に大車輪のNO8タイラー・ポールがピック&ゴー。ここからワイド展開に切り替えると、CTBゲイツのキックパスを受けたのは、第8節以来出場のCTBサミソニ・トゥアだった。
コンバージョンはポールに2回当たる椿事で外れたが、10-7で逆転。この直後、FBイズラエル・フォラウに替わって投入された安田卓平が、前半32分、インゴールに駆け込むことになる。
3カ月前の第5節以来の先発だったFLリアム・ギルがジャッカルで魅せるなど、浦安DRは堅いディフェンスで得点を許さない。すると相手が危険なタックルでイエローカード(相手15番)。
相手フルバックが一人少なくなった32分。敵陣ゴール前で連続攻撃。しかしGR東葛も激しくモメンタム(勢い)が生まれない。ここでSO田村が冷静に一人少ないバックス裏、インゴールへキックを転がした。
広いインゴールでボールを拾ったのは、途中出場の安田。緊急出場に応えるチーム3トライ目で、前半10点リード(17-7)で折り返した。
しかし後半、ピンチがやってきた。
センターコンビの活躍で後半3分にトライが生まれて、24-7と突き放した。完勝ムードが漂いだしたところで、GR東葛はFBレメキロマノラヴァ主将を突破口に連続トライ。3点差(24-21)まで追い上げられた。
しかし。
「どんな困難に直面しても、コネクトして落ち着いて、過去は切り離して集中する――そこは出来ました」(SH飯沼主将)
敵陣チャンスを得ると後半17分、この日大爆発したCTBトゥアの強烈ヒットで前に出る。最後は途中出場のブロディ・マカスケル。同じく途中出場のサミソニ・アサエリの後押しを受け、雪崩れ込んだ。
さらにCTBゲイツの十八番、インターセプトによるトライを含む2本、ペナルティゴール1本を加えた浦安DR。「点差が開くとペナルティが多くなったりスイッチが切れる」(SH飯沼主将)という課題はあったが、そのまま最後まで駆け抜けた。
ファイナルスコア、48-28でノーサイド。
石巻の地で、2季連続のD2優勝を決めた。
競技レベルが年々上がるリーグワン。D2での連覇も簡単ではなかった。努力がひとつ実を結んだのだ。
GR東葛に対しては前回対戦で4点差の勝利。今回は過去3度対戦で最多の7トライ48得点だ。この日1トライずつのWTB石井魁と安田卓平は8トライでD2トライ王に輝き、ハットトリックしたCTBゲイツは7トライで4位タイに入った。
しかし勝利の瞬間、チームに歓喜はなかった。
ここは通過点。SH飯沼主将は表情を変えなかった。
明治大学の後輩であるFL武内慎。主将と同じく「通過点」という認識だった。
「今週から入替戦を含めて3試合、『240分』というところをチームとしてフォーカスしていました。優勝は去年もしています。チームとして『通過点』というというところは認識していました」(FL武内)
しかし大切な通過点だ。試合後には攻守の柱であるNO8タイラー・ポールがPOTM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)をついに受賞。D2優勝セレモニーも行われ、飯沼主将が記念の優勝トロフィーを受け取り、こうスピーチした。
「今日の試合、今シーズン、たくさんのご声援ありがとうございました。また、各地まで足を運んで応援していただきありがとうございました」
「残るは、入替戦のみとなりました。今年こそは、必ず、ファンのみなさんと共に昇格したいと思いますので、引き続き応援よろしくお願いします。今日はありがとうございました!」
その後全員が勢揃いしてチームD-Rocksとして記念撮影。笑顔の輪が広がったのは、西橋勇人アシスタントマネージャーの音頭で、優勝トロフィーを掲げた場面だった。「TEAMMATES事業」で今季入団の宮原晴輝(8歳)が杯を掲げるタイミングで、全員が掛け声を合わせ、何度も盛りあがった。
ノーサイドの交流が終わったピッチで、浦安DRの選手たちは円陣をつくった。
アッカーマンHCが語りかけた。
「まず勝てたことを祝おう。勝てたことに対する感謝を忘れてはいけない」
「ディビジョン2の優勝というひとつの仕事は終わった。これから3週間はチームファストで、完全な準備を整えよう。過去に戻ることもできない、未来をどうすることもできない、まずは私たちの次のステップである身体のリカバリーに集中しよう」
浦安DRの『次の仕事(ネクスト・ジョブ)』は言うまでもない。
入替戦の相手は、1年前に入替戦で苦渋を味わったD1の花園近鉄ライナーズ(12位)。
もう一度、この場所に、戻ってきた。
「またライナーズさんと戦うのは、スタートラインに立ったような気持ちと、完全に新しいチャレンジ、という気持ちが入り交じった感じがします。過去に囚われず、相手の分析から始め、パフォーマンスをだすための準備を進めていきます」(アッカーマンHC)
運命の入替戦第1節は5月18日(土)。会場はスピアーズえどりくフィールド(江戸川区陸上競技場)だ。
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[i] HO藤村琉士/PR金廉/LOトム・パーソンズ/FLリアム・ギル/WTB石井魁/CTBサミソニ・トゥア/WTBリサラシオシファ/FBイズラエル・フォラウ