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2023-24シーズン ディビジョン2 順位決定戦 第1

「適応力からの猛攻」 

NTTジャパンラグビーリーグワン2023-24シーズン ディビジョン2 順位決定戦 第1
◇浦安DR 5720 S愛知(2024420日@千葉・ゼットエーオリプリスタジアム)

 

浦安D-Rocks(浦安DR)の入場時にスタジアムDJが叫んだ。

「絶対に、絶対に負けられない大きな一戦です!」

リーグワンのD2(ディビジョン2)は、順位決定戦2試合の結果で最終順位が決まる。D2リーグ戦は91敗で2年連続の1位通過を果たしたが、ここで破れれば3位フィニッシュもある。

市原の空は穏やかだ。市原のゼットエーオリプリスタジアムは薄曇りの陽光に包まれている。

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だがピッチの上には"決闘"の空気感が漂っている。入場してきた浦安DRSH飯沼蓮主将の髪型は「順位決定戦なので気合いをいれた」という短髪に変わっていた。

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ピッチの反対側に立ったのは、リーグ戦3位通過の豊田自動織機シャトルズ愛知(S愛知)。この場所での前回対戦は、雷雨で試合中止に。実力を確かめ合うような接戦(107)を繰り広げた相手だ。

浦安DRの面々は、リーグ戦第10節から先発4名が替わっている[i]PR竹内柊平、LOリーヴァイ・ダグラス、FL武内慎、WTBラリー・スルンガだ。

入場後にベンチへ向かったリザーブ陣に目を転じると、そこにはチーム公式戦デビューともなる今季初出場のPR浅原拓真。第5節以来のメンバー入りとなったFLリアム・ギル。そして初のメンバー入りとなった東海大学出身の22歳、ルーキー何松健太郎の姿がある 

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重大な一戦は"まさか"から始まった。

自陣右でSH飯沼主将が陣地挽回のキックを試みる。これを相手がチャージダウン。弾かれたボールが自軍インゴールに転がる不運。これを押さえたS愛知が先制トライ。さらに前半7分にはペナルティゴール(PG)を許し、10点を先行された。負けてはならない順位決定戦で、開始7分で10失点。

しかし浦安DRは一枚岩だった。

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「今日の試合で一番良かった部分は、選手たちの適応力です。相手が良いスタートを切って得点を重ねましたが、落ち着いて、良いラグビーをしました」(ヨハン・アッカーマンHC

前半7分にラインアウトをスティールされた。悪い流れが続いていく。と、ここでFL武内慎が頭脳プレーでボールに絡みついた。加勢したLO中島進護がボールを引き抜き、獲られたボールを奪い返した。

この攻守交代から敵陣でアタック開始。スペースを突くポジショニングをとったSO田村熙に対し、SH飯沼主将が鋭いパスを送る。

絶妙な連携から突破が生まれ、最後は左隅でCTBシェーン・ゲイツが左隅でトライを決めた。

IMG_4829.JPGIMG_4833.JPGさらに前半12分の連続トライで逆転(1210)すると、5分後には相手のロングゲインに対してHOフランコ・マレーが、ジャッカルで攻守交代。

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ボールを奪われても、奪い返す。

浦安DRには悪い流れを断ち切る強さ、適応力があった。相手にハイタックルでのシンビン(前半20分)が出ると、的確に数的優位を突いて3本目のトライ。高いエナジーで攻守のスタンダードを維持した。

この日、チームを牽引した一人がSO田村熙だ。

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前半29分にラインブレイクした相手に対してジャッカル成功。守備でも魅せると、CTBトゥクフカトネの突破からの4トライ目で13点リード(2613)とした前半終了間際。

敵陣10mラインの手前で、田村がラックの後ろにポジショニングした。

「スコアボードをみると時間もありませんでしたし、失敗してもポジティブなチャレンジだと思いました。いかに選手の気持ちを上げるかを意識していることもあります」(SO田村)

40mのドロップゴール。低い弾道で伸びた楕円球は、Hポールのバーを超えた。会場がどよめきと拍手に包まれる。チームは最高の雰囲気でハーフタイムを迎えた。

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ボールを奪われても、奪い返す。

後半開始のキックオフ・ボールがミスとなり、センタースクラムから開始。しかしこのスクラムで相手反則(コラプシング)を誘発。フォワード陣がボールを獲り返した。

IMG_4839.JPGこのスクラムペナルティからの敵陣侵入で、前半26分に途中出場していた何松健太郎がリーグ初トライ。

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さらに6分後(後半9分)にも連続トライ。S愛知は元シャイニングアークスの湯本睦が後半14分に反撃のトライを挙げるが、浦安DRのリードは23点(4320)あった。

惜しむらくはプレーの一貫性だ。

SH飯沼主将も指揮官同様に「前半のピンチで全員が落ち着いてコネクトして一つになれた」と適応力を誇ったが、後半のプレー精度については要改善と話した。

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「後半は点数が開くにつれて少しペナルティが増えました。取り急いだ場面もあったので、一貫性をもって次の試合に向けてやっていきたいと思います」(SH飯沼主将)

ただ選手はハードワークしていた。後半24分過ぎ、ピッチ上で3人が同時に足が攣り、動けないでいる場面もあった。後半28分には常にエナジーを発する先発LO中島がジャッカル。相手の反則(スピアタックル)を引き出し、エリアを戻した。

この直後のラインアウトの展開攻撃で、ウイングに入った途中出場の小西泰聖が突破。

IMG_4843.JPGサポートに入ったSH飯沼主将がフィニッシュ。この日最後の8本目のトライは、スクラムハーフのコンビで獲り切った。

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そして初出場を果たした途中出場のPR浅原は、後半36分のピンチでインターセプトを披露。ベテランの味をみせ、5720の大勝に貢献した。

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「セットピース、アタックに関していくつか課題はありますが、全体的に試合を通して良いラグビーをすることができました」(アッカーマンHC

指揮官はまた、ディビジョン1との入替戦へ向けた仕上がり具合に関しては「順調に進んでいることに自信を持っています」と力強く話した。

絶対に、絶対に負けられない大きな一戦は、まだ終わっていない。

次戦は順位決定戦の最終第2ラウンド。ここで勝てば文句なしでD2の連覇が決まる。D2王者として、D1の最下位(12位)チームとの入替戦へ臨むことができる。

運命の舞台は東北・宮城。セイホクパーク石巻(石巻市総合運動公園)石巻フットボール場で、56日の正午、運命の笛が鳴る。

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