GAMEゲーム
レポート
REPORTレポート
2023-24シーズン第9節「上手くいかない日でも」
◇NTTジャパンラグビーリーグワン2023-24シーズン第9節
◇浦安DR 7-6 九州KV(2024年3月23日@佐賀・駅前不動産スタジアム)
創設2年目の浦安D-Rocks(浦安DR)にとって、これが九州初上陸だった。
博多から電車で南へ約30分。佐賀・鳥栖駅のホームで降りると、巨大な建造物が目に飛び込んでくる。Jリーグ・サガン鳥栖の本拠地でもある駅前不動産スタジアムだ。荒天予報は的中。スタジアムの上空には、東シナ海から流れてきた雨雲が垂れ込めている。
開始30分前になって、両軍が練習を開始した。ピッチのあちこちにはいくつも水たまりがある。雨中戦は必至となる状況だ。そこでフォワードは、入念にモールを確認していた。
7勝1敗の浦安D-Rocks(浦安DR)は、首位で第9節を迎えた。
開幕戦黒星でスタートしたレギュラーシーズンも残り2試合。ディビジョン2(D2)の上位3位以内は決定しており、この後はトップ3によるD2順位決定戦(2試合)、そして運命の入替戦(2試合)へと駒を進める。
第9節の相手は、今季2度目の対戦となる5位の九州電力キューデンヴォルテクス(九州KV)。今季リーグ唯一の九州チームであり、昨季入替戦(第1戦)では堅牢なディフェンスでD2チームを完封し、その後昇格を決めている。
浦安DRは前節からは先発9人を変更した[i]。
飯沼蓮主将はリザーブスタートとなり、SH小西泰聖が先発。ゲームキャプテンは東福岡高、福岡工業大学出身のLO中島進護。元コカ・コーラのFLブロディ・マカスケル、リザーブから今季初出場した鍋島秀源(福岡・輝翔館高-福工大)ら九州出身者にとっては凱旋試合となった。
「試合はセットピース、特にラインアウトで流れを掴むことができませんでした。あとはコンタクトプレーでボールを失うことも多く、満足できるパフォーマンスではありませんでした」(アッカーマンHC)
降り続ける3月の雨のなか、お互いにノックオンが続いた。
浦安DRは最初の敵陣ラインアウトでミス。自陣で九州KVの連続攻撃を受ける。守勢に回ったが、ここはWTBリサラシオシファが芯をつくビッグタックル。先制点を許さない。
背番号8(ナンバーエイト)で今季初先発のジェームス・ムーア。ボディコントロールを奪う守備技術でアタックを遅滞させる。背番号3を担ったPR金廉は、果敢なセービングで攻守交代。相手に負けないディフェンスでインゴールを守る。
前半18分には敵陣でスクラム。
ここでスクラム・ペナルティを奪取すると、さらにスクラム選択。しかし九州KVが強力スクラムで対抗。セットピースで優位性をつくれず、九州KVも気迫のこもったタックルで守備線を割らせない。
まさに一進一退だった。
「自分たちは(相手の勢いを)受けることはないんですが、ボールをロストすることや、セットピースが上手くいかないことが、かなりありました」(LO中島)
お互いに活路を見出せないなか、前半33分だった。
浦安DRの反則で相手がペナルティゴール(PG)成功。この3点のみが前半スコア。九州KVが3-0とリードして後半を迎えた。
後半開始後もラインアウトのミスなどにより、敵陣で効果的なアタックができない。後半10分にフロントローが3枚交替。HOフランコ・マレー、PR柳川正秀。そしてPR鍋島秀源が初出場を飾った。
後半12分、浦安DRは敵陣22mで連続攻撃。PR柳川が負傷で倒れるなか、14人でアタックを続ける。しかし守備に定評のある九州KVの圧力もあり、最後はノックオン。
キック名手のSOクリップスヘイデン。絶妙と思われたロングキックがボール一個分、デッドゴールを割るなどの不運もあった。開始60分間を過ぎてもスコアは3-0だ。
交替(HIA)のPR柳川にかわり、2度目の出場となったPR坂和樹。後半23分にFW8人のプレッシャーからペナルティ奪取。しかしタッチキックのミスで、アドバンテージを活かせない。
後半30分過ぎ、さらに雨脚が強くなる。
猛烈な斜線がピッチに刺さっている。試合時間は残り8分だ。ここで九州KVは約45mのペナルティゴール成功。リードを6点に広げた。
残りは4分。
何度チャレンジしても、何度立ち上がっても、それでも上手くいかない。
もう一度立ち上がってみる。立ち向かう。それでもやはり上手くいかない。
そんな挫けそうになる日でも、浦安DRは守り続けた。2本のPGは許したが、トライは許さなかった。指揮官はノートライに抑えたディフェンスを讃えた。
「もちろんパフォーマンスは良くありませんでした。ただ試合に勝つことができたのはディフェンスが良かったからだと思います。3点差、6点差という状況でトライをこちらが奪うことができれば、挽回することができます」(アッカーマンHC)
雨の日でも、耐えていればチャンスは巡ってくる。
後半34分に相手反則からラインアウトモール。途中出場の田村熙の絶妙なタッチキックで、一気に敵陣ゴール前5mへ。あと5mの攻防を制すれば逆転可能な状況をつくりだした。
福岡出身のLO中島がジャンパーとなり、モールの核となった。塊がじわじわと前進する。ボールを保持しながら突き進む。そして途中出場のHOマレーがグラウンディング。キックオフから76分後、試合前に練習していたモールで、両軍最初のトライを生んだ。
「試合を通してモールが上手く機能していませんでしたが、ここぞ、という場面で全員が仕事を果たし、トライを取ることができました」(アッカーマンHC)
これで1点差。
キッカーは途中出場のSO田村熙。これがこの日最初のプレースキック。しかし練習前なら田村もプレースキックを入念に繰り返していた。
田村が雨粒のふりかかる視界の先に、Hポールを捉える。雨に顔をしかめるようにしながら、落ち着いた様子で振り抜き、歓喜を呼んだ。
7-6でついに逆転。
そして降り続く雨のなかでノーサイド。最後はモールの守備でターンオーバーを起こした。
「今日は悪天候でしたが、勝てたことが自分たちにとって一番、大きかったことだと思います」(LO中島)
うまくいかない時間をたえしのぎ、ディフェンスと準備で勝利を掴んだ。
次戦は開幕戦で今季唯一の敗戦を喫した2位のNECグリーンロケッツ東葛。レギュラーシーズン最終節を飾る、大一番へ立ち向かう。
[i]PR坂和樹/HO藤村琉士/PR金廉/LO小島佑太/LO中島進護/SH小西泰聖/SOクリップスヘイデン/CTBトゥクフカ トネ/WTBリサラ・シオシファ