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2023-24シーズン 第8節「スクラム大戦」
◇NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24シーズン第8節
◇浦安DR 19-14 S愛知(2024年3月17日@愛知・パロマ瑞穂ラグビー場)
スクラムでくると思っていた。
浦安D-Rocks(浦安DR)が14点をリードした、前半26分30秒だ。
6勝1敗の強豪、豊田自動織機シャトルズ愛知(S愛知)が、浦安DRのゴール前でペナルティを得た。相手は14点ビハインド。ペナルティゴールで3点を狙える位置だ。しかし強力スクラムのS愛知は、8対8の勝負を選択した。
「オッケー!」
パロマ瑞穂の曇天に響いた大声。声の主はPR竹内柊平。スクラムの最前線に立ち、押し合いの軸とされる背番号3を担う26歳だ。
観客席からS愛知の応援コールが巻き起こる。ファンもスクラムが重大事だと理解している。
ビジターの逆風のなか、浦安DRがスクラムをセット。HOフランコ・マレーが低い姿勢をとり、両サイドに両プロップの竹内と石田楽人がつく。
続いてFW第2列で130kgのLOリーヴァイ・ダグラス、2019年W杯日本代表のLOジェームス・ムーアが密着する。そしてFW第3列がついた。クラウチ、バインド――
セット!
橋元教明レフリーの声で8人と8人が衝突する。塊と塊が噛み合い、煙が出るような競り合いが始まった。S愛知がボール投入。次の瞬間だ。浦安DRがグイと半歩前に出た。PR竹内の側から相手を崩していく。
と、ボールがスクラム最後尾からこぼれた。そのイーブンボールにSH飯沼蓮主将が反応、飛び込んで確保――。
ターンオーバーを起こしてみせた。
「シャトルズさんがスクラムを選んできた場面で、ターンオーバーできました。相手の強みで上回ることができ、試合として良い立ち回りができたと思います」(PR竹内)
6勝1敗同士。ディビジョン2(D2)の首位攻防戦だった。
1位の浦安DRは、前節から先発3名(PR石田、LOムーア、WTBシェーン・ゲイツ)を変更。リザーブでは第4節以来の復帰となった藤村琉士、今季初出場を飾った佐藤大樹、第3節以来出場のトゥクフカトネが入った。
まず浦安DRはフィールドで、真っ向勝負を期していた。
ファーストコンタクトでパスは多用しない。突っ込む。コリジョン(衝突)で上回る。肉弾戦に矜持を持つ浦安DRは、相手のモール守備には苦戦しながらも序盤、FW攻勢で2連続トライを奪った。
「シャトルズさんとの試合はいつもフィジカルバトルになります。ファーストはパスせずに全員キャリーで、ハードにいくことを徹底し、それが出来た前半は良いスタートを切れました」(PR竹内)
しかし14点奪取後に自陣でペナルティが増えた。S愛知は前半34分にスクラムではなくペナルティゴール(PG)を選択。さらに前半終了前にトライを決めきれず、逆にPG加点を許して8点リード(14-8)で折り返した。
後半最初のスクラムは43分だ。
自陣で相手ボールのスクラム勝負。スクラムは基本的にボール投入側が有利といわれるが、ここでも背番号1の石田をはじめ、一枚岩となったFWが強いコネクションをみせた。
昨季を含めて、S愛知の武器である強力スクラムには苦戦を強いられてきた。しかし面目躍如、日々の研鑽が力を発揮した。
そしてこの日はラインアウトの守備も絶好調。直後の相手ラインアウトで、両プロップ(竹内、石田)がリフトしたLOムーアが、相手スローをカット。得点の芽を摘んだ。
元南アフリカ代表フォワードであるヨハン・アッカーマンHCは、8人の働きに高い評価を与えた。
「今日のフォワードの働きにはとても満足しています。スクラムで上手く攻めることができ、ラインアウトにおいても全体的に上手くいっていました」
進境著しいS愛知にクロスキックの獲得からトライ(後半7分)を奪われるが、その5分後には、3試合10番先発の田村熙のオフロードパスから、ウイング起用となったシェーン・ゲイツが突破。この日も獅子奮迅だったHOマレーのトライが生まれた。
しかし後半、S愛知に流石のスクラムでペナルティを奪われてPG加点(後半23分)を許す。その後、浦安DRは連続攻撃でパスミスなどが続いて得点が伸びなかった。
「たくさんのチャンスがありましたが、そこで決め切れませんでした。敵陣に入ったら攻め切り、スコアして帰ることをしていかないと競ったゲームを制することができません。そこが一番の課題です」(SH飯沼蓮主将)
ノーサイドの瞬間、スコアは5点差(19-14)だった。
「まずは勝利したことに誇りを感じます。シャトルズさんもすごく良いプレーをしていました。試合は拮抗しましたが、その中でも選手たちが冷静にプレーして勝てたことを評価したいと思います」(アッカーマンHC)
会心のゲームではなかったが、それでも勝ち切る地力をみせ、D2首位の座を保った。
D1との入替戦に出場するD2上位3チームはすでに決定している。浦安DRとS愛知、NECグリーンロケッツ東葛の3チームだ。
5点差の熱戦をくりひろげたS愛知とは、約1カ月後、三つ巴による順位決定戦で再戦する。
その前に第9節が待ち受ける。浦安DRは3月23日(土)は九州に初上陸し、佐賀・駅前不動産スタジアムで九州電力キューデンヴォルテクスに挑む。