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2023-24シーズン第7節「激しさと正しさと」
◇NTTジャパンラグビーリーグワン2023-24シーズン第7節
◇浦安DR 31-12 RH大阪(2024年3月3日@大阪・ヨドコウ桜スタジアム)
若き主将は言った。
「当たり前のことほど、忘れていくものだと思います」
今季の浦安D-Rocks(浦安DR)は、昨季の課題だったディシプリン(規律)を克服しつつあった。
開幕節以降、深刻な反則「ペナルティ」の数は、5試合連続でヒト桁台。
第2節に関しては極めて少ない4だった。事実として反則数は少なく優等生だった。しかし――。
「今日になってディシプリンが明確に課題に上がってきました。考えられるのは、ここまでディシプリンが良かったので、特に今週一週間、言い続けていなかったことです」
「当たり前のことほど、忘れていくものだと思います。その当たり前を言い続けないといないなと、今日思いました」(SH飯沼蓮主将)
3月3日(日)のリーグワンD2(ディビジョン2)第7節。5勝1敗で首位にいる浦安DRは、前節から先発1名(PR坂和樹)のみを変え、2勝4敗(4位)のレッドハリケーンズ大阪(RH大阪)戦を迎えた。
大阪のヨドコウ桜スタジアムは快晴に恵まれた。
バックスタンドは穏やかな陽光を浴び、光る板のように輝いている。午後1時。ビジターの浦安DRに続いて、ホストのRH大阪が華やかに入場。赤いホッケーシャツに身を包んだRH大阪ファンの声援が飛び交った。
風上に立った前半、浦安DRは岩盤のように強固だった。
相手指揮官が「一発目でペナルティをとられ、ゲームの流れに乗れなかった」と振り返ったシーンは、開始直後だ。
この試合で50キャップ達成のLO中島進護が、守備で輝いた。キックオフ直後の相手キャリーをうけとめると、粘り強くファイト。いきなり反則を誘発したのだ。
この好プレーは、その後の開始2分でのモール・トライの端緒となった。浦安DRのローリー・ダンカン アシスタントコーチが「一貫性が素晴らしい」と評価するLO中島は、前半10分のモールDFでターンオーバーの中心的役割を担った。
続いては、2試合連続で背番号10を背負ったSO田村熙だ。
7点リードで迎えた前半6分のスクラム。みずから仕掛けると絶妙パスでボールを活かした。するとスペースをもらったCTBサミソニ・トゥアが右サイドで大暴れ。ハンドオフで弾きながら2連続トライを奪った。
そして、南アフリカ出身のNO8タイラー・ポール。
モール・ディフェンスでも力を発揮したフォワード陣にあって、NO8ポールの働きは出色だった。
12点リードの前半16分。敵陣ゴール前で脱出狙いのキックをチャージ。ボールは相手に入ったが、焦って蹴られたキックからWTBリサラ シオシファがカウンター。
FB安田卓平の3本目を演出した。
「(NO8ポールは)アタックでもディフェンスでも力強く、ブレイクダウン(ボール争奪戦)でのリアクションも速かったです。素晴らしいパフォーマンスでした」(ダンカン アシスタントコーチ)
また、1トライ追加で26点リードの28分20秒だった。
自陣ゴール前の守備で、NO8ポールのスパイクが脱げてしまった。しかしプレーは続行。ラック脇に並ぶと鋭いタックルを放ち、ゴールラインの死守に貢献した。チーム5本目のトライ(前半34分)も、左隅でNO8ポールが一人ラックでボールを守ったことが大きかった。
明確な課題は後半だった。
31-5で試合を折り返した浦安DRは後半、ノートライで終わる。強烈な風下に立ち「ゲームに影響が出るほど」(SH飯沼主将)だったが、チームの問題意識は、後半5から9に急増したペナルティにあった。
RH大阪もハーフタイムで修正していた。
高かったボールキャリーの姿勢、タックル精度などを改善したといい、RH大阪の指揮官、マット・コベインHCは「後半は集中を保てていた。選手を誇りに思う」と評価した。
ホストのRH大阪は、SH山内俊央がパスカットなど随所で活躍。WTB小村健太は絶妙タッチキックでチームを大きく前進させた。
浦安DRも、後半14分にはゴールラインを背負いながら、ハイテンポのFW攻撃に対応。FLブロディ・マカスケルがノッオンを誘うタックルで、失点を防いだ。
ただ後半25分、ノーボール・タックルからエリアを後退し、モールでトライを奪われたシーンは痛恨だった。その後もノックオンなどもあって得点のゼロ行進は続いた。
最終スコア「31-12」で6勝目を挙げたが、晴れやかな勝利とはならかった。
試合直後、SH飯沼主将はリーダー陣で緊急で話しあった、と明かした。
「今日は風がありましたが、80分通して波ができてしまいました。後半リアクションスピードなどが落ちてしまった。これを入替戦でやったら終わりです」
「危機感をもって緩みをなくしていかないといけません。それは一人ひとりの意識の問題ですし、キャプテンとして試合中はもちろん、練習中も言い続けなければいけません」
ラグビーは激しくプレーしなければならない。同時に、心と身体を制御して、その日のレフリーの基準も考慮しつつ、複雑なルールに則ったプレーを続けなければならない。
激しさと正しさの両立。そんな難題に挑戦しつづける浦安DRは、レギュラーシーズン7試合を終えてD2首位をキープしている。
すでに4位以下の可能性はなくなっており、今後D2上位3チームの順位決定戦はあるものの、ディビジョン1との入替戦出場が決定した。
まずは、D1への挑戦権は手に入れた。
次戦の第8節は、雷による試合中止(第5節)となった2位豊田自動織機シャトルズ愛知との再戦だ。6勝1敗同士。大事な首位攻防戦が待ち受ける。