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2023-24シーズン トレーニングマッチ「躍動の120分」
◇2023-24シーズン トレーニングマッチ
◇浦安DR 73-81 トヨタV(2024年2月9日@愛知・トヨタスポーツセンター)
チームに新加入した山梨学院大学のNO8小嶋大士。非公式のデビュー戦となる練習試合の相手メンバーをみた。ラグビー界の有名人ばかりだ。
「ファーストゲームで緊張していましたし、相手のメンバーはテレビで見ていたような選手ばかりでした」
ディビジョン2(D2)で4勝1敗の浦安D-Rocks(浦安DR)は、リーグ戦の休養週に40分×3本の練習試合を行った。
計120分間のゲームの相手は、ディビジョン1(D1)の強豪トヨタヴェルブリッツ(トヨタV)だ。相手メンバーには、ビッグネームが揃っていた。
2023年W杯で日本代表主将を務めた姫野和樹。背番号8は南アフリカ代表のピーターステフ・デュトイ。スクラムハーフはNZ代表のレジェンドSHアーロン・スミス・・・。
格上の一本目と戦える機会はそう多くない。成長の機会をもらえた感謝を胸に、愛知・トヨタスポーツセンターに遠征した浦安DR。
主力級を出しあった1本目(40分)で、充実の時間を過ごした。
[1st]浦安DR 42-24 トヨタV
空は爽やかに晴れ渡っているが、芝生の上は本気モードの緊張感が漂う。
キックオフ。序盤は浦安DRが反則(ノット・ロールアウェイ)で自陣に下がる。いきなりピンチを迎えたが、ここは相手のミスキックに救われる。立ち上がりの失点は逃れた。
敵陣で、常にエナジー満点のLO小島佑太が叫んだ。
「イエス!」
自陣脱出直後のブレイクダウン(ボール争奪局面)だ。プレッシャーを加え、攻守交代を起こしてみせたのだ。さらに相手が反則(オフサイド)。ここでPR坂和樹がFW戦からねじ込み、開始5分で先制トライを奪った。
さらにSO田村熙が難しい角度のコンバージョン成功。最初のスコアチャンスで7得点した。
さらに2分後。
守備巧者のCTBシェーン・ゲイツが前掛かりのアタックを読んだ。相手が一斉に振り返る、鮮やかなインターセプト。そのまま加速して2連続トライ。トヨタV相手に14点を先取した。
しかしトヨタVはバックスが再三躍動した。
長短キックを活用したスピーディーな展開攻撃から、開始13分にSHアーロン・スミスがサポートから反撃トライ。さらに2トライを許して14-17と逆転された。
2連続トライからの、失3連続トライ。
しかし失点後の円陣はエナジーが高かった。大丈夫! 良いディフェンス! ポジティブな声が行き交う。
D1チームと伍する力があった。ボールを持ったPR鍋島秀源が強気にぶちかます。FLフランコ・マレーは膝の高さに低空タックルを突き刺す。フィフティーンの気力は充溢しており、どこか楽しげですらあった。
すると25分だった。
ブレイクダウンでノット・リリースを誘った。ここから敵陣侵入。ゴール前のFW戦からバックスが移動攻撃。SO田村熙がキャリーに切り替えて、会心の逆転トライ。自身のコンバージョン成功で21-17とした。
展開は一進一退のシーソーゲーム。
トヨタVが32分にSHアーロン・スミスの決定的なオフロードパスから、3度目の逆転(21-24)。3分後にCTBゲイツがふたたびインターセプトを決め、この日4度目の逆転(28-24)。
終止符を打ったのは浦安DR。
終盤、2本のトライで突き放した。
HO濱野隼也が自陣で得意のジャッカル成功。
速攻からの的確ロングキックで相手を背走させると、チェイスしていたWTBラリー・スルンガがキックチャージ。イーブンボールを捕球し、37分、独走トライを決めるスーパープレーで突き放した。
さらに46分、敵陣ゴール前ラインアウトから武器のモールを組み上げる。大型FWを揃えるD1強豪を押し込んでいく。46分。研いできた武器「モール」で、会心の6本目。
この日がケガからの復帰戦で、リザーブから前半最後のトライを目撃したPR浅原拓真。このモール・トライには価値があると思った。
「ヨハン(・アッカーマンHC)のこだわりでもあるモールに対しては、よく練習しますし、僕らもこだわりが強い。あれだけ練習すると武器になると思います」
プライドを持つコリジョン(衝突)局面でも実力を示した。セットピース(スクラム、ラインアウト)も安定的な足場となり、42-24という成果に繋げた。
[2st] 浦安DR 17-28 トヨタV
2本目の40分間は、キックオフ後の反則から劣勢を強いられた。
さらにスクラムでもプレッシャーを受け、守勢に回る時間が長くなる。キックミスに加えて相手の好プレー(ジャッカル、キック「50:22」)などにも苦しみ、開始から4連続トライ(44、48、55、58分)を奪われる。
劣勢において輝くプレイヤーも多かった。
快足SH小西泰聖が、ルーズボールに果敢に飛び込む。相手の特大キックに追いつくフィールディングでも貢献した。
そして66分。復帰戦のPR浅原がジャッカル成功。
2本目の開始26分で、ようやく敵陣22mに入った。
「あの場面(ジャッカル)は、自分がおじさんになってゲーム理解力がついたと感じた瞬間でした。僕はあんまりジャッカルにいくタイプではないんですけど、身体が勝手に動きました」(PR浅原)
ここから敵陣奥に侵入した66分。ゴール前ラックでCTBトゥクフカ トネがピック&ゴー。自慢の突破力で後半最初のトライ。ようやく1本を返した。
浦安DRはタフだった。
一方的な展開を許さない。劣勢になっても挽回するエナジー、武器がある。この日はやはりモールが最大の武器となった。
好タックラーでもあるユーティリティBK髙野祥太が、ペナルティから敵陣5mに迫る好タッチキック。そして武器のモール発動。自分達の土俵に相手を引き込むと、じわじわと押し込み、寄り切り、2本目最初のモール・トライ。
さらに5分後の79分にもモール起点でフィニッシュ。3連続トライを奪った。PR浅原は「今日は武器のモールをいかんなく発揮できました」と成果を誇った。
[3st] 浦安DR 14-29 トヨタV
2024年1月に発表された7人の新加入選手。
そのうち森駿太(立命館大学)、ケレブ・カヴバティ(山梨学院大学)をのぞく5人がこの日、主に3本目の40分間でチーム初試合を迎えた。
PR玉永仁一郎(流通経済大学)、HO松下潤一郎(明治大学)、2本目から出場したNO8小嶋(山梨学院大学)、SH白栄拓也(筑波大学)、そしてCTB何松健太郎(東海大学)の5人だ。
接点でも果敢に戦い、スクラムのサイドから抜け出すシーンもあったNO8小嶋。走りながら手応えを掴んでいた。
「自分の強みは運動量と、接点に入るまでのスピードです。相手は強かったですけど、やりがいがあるなと思いました。試合通して身体を当てていくなかで自信が芽生えました」
新人だけでなくベテラン勢も輝いた。
センター起用のティアン・メイヤーは、相手をくの字に折る猛烈なタックル。円陣では状況整理と士気高揚を組み合わせた声掛けで、チームを導いた。
3本目最初のトライは浦安DR。
SH小西の仕掛けからCTBトゥクフカが突破。エリア左隅で石橋拓也がボールを活かすオフロードパス。これがフィニッシュブローとなり、フォローのブロディ・マカスケルがインゴールへ入った。
さらにPR庵奥翔太が戦況を見守る仲間を沸かせる。
キックリターンから度胸満点のストレートランを仕掛けてきた相手ウイング。これを音の鳴るタックルで一撃ダウン。ピッチ内外を大いに沸かせた。
しかし分厚い選手層を誇るトヨタVが2本連続トライ。
スクラムでの劣勢、攻守交代後の守備整備が遅れも響いた。終盤にも3連続でグラウンディングを許したが、大きな収穫のひとつは83分だ。
3本目のフォワード陣も、モール攻撃は効果てきめんだった。
組めば重機の力強さでしぶとく前進。矜持とスキルを同時的に感じる、完成度の高い8人の塊。
83分にフォワード戦からトライを奪取。スコアラーは今季ケガから復帰のPR平井将太郎だった。
遠征先で出し切った総力戦。3本合計のスコアは「73-81」。試合後の選手たちは朗らかだった。新人のNO8小嶋は言った。
「今日は一回プレーすると、緊張よりも楽しさが上回りました。良い経験が出来ました」
NO8小嶋はアーリーエントリーした一人。公式戦への意欲を問われると「出たいです」と即答した。
そして「画伯」の愛称を持つ多芸多才のPR浅原。ゲームに戻ってきた喜びを感謝と共に話した。
「緊張しましたが、良い感じに試合に入れました。メディカルやスタッフの皆さんに本当に助けてもらいました。試合中も楽しくて、良い感じでした」
2月17日土曜日は、日本製鉄釜石シーウェイブスを神奈川・大和なでしこスタジアムに迎える。自信を深めた浦安DR。
ここから、いよいよリーグ後半戦に突入する。