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2023-24シーズン第4節「47分間の熱戦」

NTTジャパンラグビーリーグワン2023-24シーズン第4
◇浦安DR 10-7 愛知S2024113日@千葉・ゼットエーオリプリスタジアム) 

 

千葉・市原の空が急に暗くなった。すると後半7分。突然の閃光。すぐに分厚い雨雲の上で、雷鳴が轟いた。浦安D-Rocks(浦安DR)の攻撃中だった試合は、雷によって中断された。

まさかの事態の連続だった。

 

ディビジョン2D2)の第4節。21敗で2位の浦安DRにとっては、3戦全勝で首位に立つ豊田自動織機シャトルズ愛知(愛知S)を迎えての首位攻防戦。

前節からはスタメン8[i]を変更。今季加入の田村熙はフルバックでチーム初先発。10番のヘイデン・クリップス、12番のオテレ・ブラックとあわせてピッチ上には3人のスタンドオフ経験者を揃えた。

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「(田村は)15番として入った練習で良いパフォーマンスを見せてくれており、起用したいという思いがありました」

アッカーマンHC(ヘッドコーチ)は起用理由を語った。

「彼のアタック、キックの能力を試合で観られたらと思っていました。スタンドオフが3人いる時のコンビネーションを試したいという理由もありました」

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しかし試合は2人のフッカー(先発の藤村琉士、リザーブの金正奎)が相次いで負傷し、スクラムは後半早々、押し合わない『アンコンテスト』になっていた。さらにその直後、雷による試合中断。

どちらもチームとして初めての経験。指揮官のヨハン・アッカーマンHCにとっても、南アフリカ代表ロックだった選手時代、10年超のコーチキャリアを通しても、この連続は「初めて経験すること」(アッカーマンHC)だった。

人は災害や災難などの非常時において、別の顔を覗かせることがある。しかし平常時と同じく理性的思考を続ける者もいる。人生初の経験のさなか、指揮官の思考は忙しかった。

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「(初めて経験する事態で)まず考えたことは自分でコントロールできる部分でした。選手の怪我の状況を確認すること、(フッカー2人に代わり)誰がラインアウトでスローイングをするのかを決めること。セットピースからのディフェンスについても確認しました」

「アンコンテストになったスクラムでは、マイボールスクラムの人材を変えることを計画していました。その次に考えたことは試合再開後のプロセスです。試合再開の前にどんなウォームアップをするのかについても検討しました」

試合中断時点で3点リード(10-7)だったが、勝敗はどちらに転ぶか分からず、緊迫していた。

序盤は英国出身の28歳、チーム初先発のFLリーヴァイ・ダグラスが195cmの巨体で幾度もボールキャリー。15番起用のFB田村は相手を背走させるロングキック、攻撃的ランで脅威になった。

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前半12分には鮮烈なカウンター攻撃があった。

「キックゲームになることは分かっていたので、キックされた後のポジション、オフ・ザ・ボール(ボールを持っていない時の動き)はこの一週間やってきました」(SH飯沼蓮主将)

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そのキックカウンターからステップ名手のFB安田卓平が突破。SH飯沼主将が背面パスでWTB石井魁に渡すと、スペースをつくる捨て身のパスからFLリアム・ギルがHポール脇へ。トライは反則(オブストラクション)で認められなかったが、会場を沸かせた。

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それでも前半18分に先制トライ。

敵陣で8次攻撃。CTBサミソニ・トゥアらビッグランナーを当てて前進。最後はPR竹内柊平がピック&ゴーで急襲。一歩も退かない接点勝負から、2024年の初トライを決めた。

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しかし開幕3連勝で充実する愛知S。前半30分にショートキックの再獲得からトライ(ゴール)で77の同点に。それでも浦安DRは、球出しを妨害する相手ペナルティ(→シンビン)でショット成功。107で試合を折り返した。

そして試合は、冒頭の試合中断に繋がっていく。

中断後、雷による試合中止が決定され、実施要項に基づいて「前半が終了している」「当日中の再開ができない」ことから、107で浦安DRの勝利となった。

ただ勝利となったものの、「スクラムとラインアウトで決めきれない場面が多かった」(アッカーマンHC)。

スクラムでは昨季に続いてプレッシャーを受ける場面が散見され、前半にはSH飯沼主将のキック「5022」で敵陣ラインアウトのチャンスを得たが、ノットストレートで得点機を逃していた。

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「チャンスでミスをしたり、活かしきれなかったりしました。選手一人ひとりの責任はありますが、チームとしてもっとコネクトし、自信を付けられるような練習、準備をしていければと思います」(SH飯沼主将)

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試合中止による敗戦という結果を受け止めた、愛知Sの徳野洋一HC。試合後、落ち着いた声色で「勝ち点4を獲得された浦安D-Rocksの皆さん、おめでとうございます」と語った。

試合中止についても「残念でありますが、それはわれわれの安全面を最優先に判断して頂いた結果であり、運営サイドの判断をリスペクトしたい」(愛知S、徳野HC)と平静だった。

勝利した側の浦安DR、アッカーマンHCも「試合は平等に80分プレーされるものであるべきだと思いますし、相手チームに対して残念に思う気持ちはあります」と率直に語った。

強敵との再戦は、約2カ月後の第8節だ。

愛知・パロマ瑞穂ラグビー場で、317日(日)、両軍はふたたび両サイドに分かれて対峙する。今回戦えなかった33分間の分まで、次こそ存分に戦い切りたい。

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[i] HO藤村琉士/PR竹内柊平/LOリーヴァイ・ダグラス/FLリアム・ギル/SOクリップスヘイデン/CTBサミソニ・トゥア/FB田村煕