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2023-24プレシーズンマッチ第5戦「エナジーが生んだ熱戦」
◇2023-24 プレシーズンマッチ第5戦
◇浦安DR 31-40 東京SG(2023年12月2日@浦安Dパーク)
週末のメンバー発表に、自分の名前があった。
ついに巡ってきたチーム初先発。福岡工業大学を卒業後、2023年に新加入したPR鍋島秀源(なべしま ひでとも)は初のスタメンに燃えた。
「気合いは入っていました。やってやろうと」(PR鍋島)
相手はディビジョン1で昨季4位の東京サントリーサンゴリアス(東京SG)。両軍のスタメンはレギュラー獲得を狙う布陣だったが、東京SGはスター軍団。学生時代から全国に名を馳せた選手ばかりだ。
「ノブジさん(斉藤展士アシスタントコーチ)にはいろんなスクラムの組み方を提示されていましたが、選ぶのは自分でした。自分のスタイルは、低く、ヒットで組むスクラム。『(組み合う瞬間の)ヒットでいく』と決めて、周囲ともコミュニケーションを取ってきました」(PR鍋島)
プレシーズンマッチで4戦全勝の浦安D-Rocks(浦安DR)。
ディビジョン2(D2)の開幕戦を翌週土曜日に控えた12月2日。午後2時キックオフの試合で、PR鍋島の仕事場であるスクラムの一本目は、前半1分だった。
フォワード第1列はPR庵奥翔太、HOアサエリ・サミソニの日本大学出身コンビ。スクラムの支柱となる背番号3を背負ったPR鍋島。レフリーの「セット!」の声、その次の瞬間、鋭く食い込んだ。
「今日は強い相手に良いスクラムを組めたと思います」(PR鍋島)
チームはその後FW戦で先制トライを奪われたが、狭いサイドの2対1を攻略し、WTB石川貴大がチーム初トライ(前半7分)。7-7と同点に追いついた直後、PR鍋島はイーブンボールに反応し、ターンオーバーも起こした。
気合十分だったのは他のメンバーも同じだ。
先発CTB本郷泰司は、格好の相手に燃えていた。この日が日本デビューとなった東京SG新加入の背番号15、南アフリカ代表のチェスリン・コルビ。タックルしたら離すまいと決めていた。
「コルビ選手は試合前のミーティングでも『タックルしても外してくるから脚を掴み続けよう」という話があって、マークしていました。(実際に)タックルをしましたが『いける』という感触はありました」
前半22分のエリア中盤だ。
満員御礼のバックスタンド側で、CTB本郷はステップを切った世界的スターのコルビにタックル。一発で仕留めてみせた。そして1トライを奪われ7点ビハインド(7-14)の前半37分には、中盤から戻って相手のトライを防ぐビッグプレー。届くか、届かないかと考える前に、身体が動いていた。
「あの場面は『いける』『いけない』というより、絶対にトライを獲られたくない、と思いました。本当にギリギリでタックルしたことで、相手の脚が出ました」(CTB本郷)
チームの高いエナジーは7-19で迎えた後半も持続した。いや、終盤に向けて熱量は高まるばかりだった。モールと独走トライで26点差(7-33)だった後半13分。
ここから浦安DRは30分間で4連続トライを挙げ、2点差まで迫ったのだ。
「チームは層が厚くなっています」とCTB本郷は誇った。「どの選手が出ても浦安D-Rocksのラグビーができますし、今日はサンゴリアスに勝つというパッション、ラグビーを見せられたと思います」
後半13分にCTBトゥクフカ トネがラック最後尾から急襲して後半1本目。同27分には今季新加入、濱野隼也が好タックルで攻守交代を誘う。ここからローレンス・エラスマスが後半2本目、ラリー・スルンガが右隅で相手2人を弾き、後半3本目。
怒濤の後半4本目は、途中出場した石橋拓也が自陣深くでオフロードパス。元東京SGのサム・ケレビのクイックパスが繋がり、敵陣へ。最後は前半に好キックもあったWTB石川貴大が、残り1分(後半39分)に左隅でダイブした。
最終盤で2点差(31-33)に迫る大熱戦。
結果的にインターセプトを許して31-40がファイナルスコアとなったが、メンバーは手応えを掴んだ。
浦安DRは昨季入替戦を除くと、チーム誕生以来、プレシーズンを含めて22戦無敗だった。23試合目で初の黒星だ。
ただ稀少な敗戦だからこそ、終盤怒濤の追い上げをみせる浦安DRは新鮮だった。東京SG相手に4連続トライ。敗北の瞬間がせまる土壇場で、秘めたるエナジー、潜在力が引き出されたようだった。
「もちろん勝ちたかったので悔しさはあります。ただ浦安D-Rocksのディフェンス、アタックはできました」(CTB本郷)
チームの底上げに寄与した今季最後のプレシーズンマッチが終わり、今週から10試合のD2レギュラーシーズンが始まる。開幕戦は12月9日(土)。昨季D1所属のグリーンロケッツ東葛が相手だ。
いよいよ、本番のキックオフを迎える。