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2023-24プレシーズンマッチ第3戦「確かな武器」
◇2023-24 プレシーズンマッチ第3戦
◇浦安DR 38-24 BR東京(2023年11月18日@東京・リコー総合グラウンド)
間違いない。武器になっている。プレシーズン初戦から4試合先発のFLブロディ・マカスケルは、モールの出来に手応えを掴んだ。
オーストラリア西海岸のパースで育ち、19歳で来日したFLマカスケルは、チームのモールに対するプライド、自信の芽生えを感じていた。
「シーズンが進むにつれ、モールが武器になってきています。どのチームに対してもモールは武器として使っていきたいです」(FLマカスケル)
華々しいプレーとはひと味違う、「モール」という集団プレー。
主にラインアウトを起点とし、最低3人(攻撃側2人、守備側1人)から生まれる局地の肉弾戦。ラインアウトでジャンパーが着地すると、両軍はどちらが先に強固になれるかの早技を競う。直後からは、押し合いという力技の勝負が始まる。
複数プレイヤーがひとつの推進力として機能するために、全員の協調は必須となる。細やかな技術、意思疎通が必要とされるそんな「モール」が、今季の浦安D-Rocks(浦安DR)の確かな武器になっている。
土曜日の昼下がり。
リコーブラックラムズ東京(BR東京)の東京・リコー総合グラウンド。
防球フェンスの向こうには多摩川の土手がある。ときおりランナーや自転車が通りすがる。のどかな河川敷の時間が流れる相手本拠地で、浦安DRはプレシーズンの3戦目に臨んだ。
前半は苦しい場面でゴールラインを死守し、フォワードが4トライを挙げた。
開始直後から守備力が光る。序盤にインターセプトを浴び、相手WTBメイン平が独走トライを狙った。WTB石井魁が追いつき、殊勲のトライセーブ。さらに浦安DRはLOローレンス・エラスマスがジャッカル。好守につぐ好守だ。
しかしBR東京は粘り強いD1チーム。浦安DRのこの日のペナルティは少なかったが、自陣反則(オフサイド)から速攻を仕留められ、先制トライを浴びた。
が、ここから浦安DRは、セットプレー(スクラム、ラインアウト)を起点に3連続トライを奪う。
まずはHO金正奎が、ラインアウトのスペシャルプレーを仕留める(前半14分)。FB安田卓平のロングキックをチェイスして呼び込んだ敵陣スクラムからは、NO.8リアム・ギルがお返しの速攻で2本目(前半23分)。ゴール成功で12-7。
そして3本目は、敵陣ラインアウトから。
ジャンパーを素早く高く上げる。着地の瞬間、準備していたFW陣がガッシリと組み合う。浦安DR側の脚の「束」が動いた。前に出る。そしてフィニッシュしたのは、またしてもHO金正奎だった。
「フォワードはモールとスクラムを強化しています」と、PR石田楽人は明かした。「重点的に取り組んでいるところ(モール)でトライをとれたことは収穫でした」
前半4本目のトライは、ふたたびモールの一撃。
BR東京が1トライを返し、3点差(17-14)に迫られていた前半35分。加入後初先発だったPR石田が、モールからスコアを飾った。先週のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦同様、D1チーム相手にモールで着実にトライを奪った。
「モールは、良いリフトをして、良いプラットフォームを作る――そうしたベーシックなところの実現性を突き詰めています」(PR石田)
先制トライを奪われたものの、週2回のセッションで徹底強化するモールを中心に、4トライを奪取。10点リード(24-14)で折り返した。
後半は開始直後から10人(フォワード5人、バックス5人)を変更。
それでもモールの守備は強かった。
後半開始後、フォワード陣が相手モールをしっかりと受け止める。序盤のピンチをしのいだ。衝突局面も引き続き激しい。FW戦から1トライを返されたが、先発のWTB石川貴大が強烈タックル。敵陣22m内でのターンオーバーを呼び込んだ。
ここから敵陣に居座った浦安DR。
モールは仕留めきれなかったが、この日はFBで起用されたオテレ・ブラックが相手を外してWTBラリー・スルンガが右隅で5本目。この日初めてのバックスのトライだった。
31-19で迎えた後半31分は、CTB本郷泰司のロングキックから敵陣チャンス。すると途中出場のSO田村熙が、迫りくる守備ラインの裏へショートキック。捕球したWTBスルンガの連続トライが生まれた。
前半はフォワードが4トライ。後半はバックスが2トライ。
セットプレー、モールを中心に攻撃の幅をみせた浦安DR。初先発だった新加入CTBサム・ケレビの突破のほか、激しいブレイクダウンのファイト、緊急時の粘り強さも光り、38-24で粘り勝ち。D1チームを相手にプレシーズンマッチ3連勝(NTT大会を除く)を飾った。
次戦は11月25日(土)。
昨季ディビジョン2で共に闘い、D1昇格を勝ち取った三重ホンダヒートが相手となる。舞台は本拠地・浦安Dパークだ。
BR東京戦の翌19日。
2024年のパリ五輪出場をかけた7人制ラグビーのアジア予選が行われ、浦安DRの石田大河、松本純弥の参加する男子7人制日本代表が、パリ五輪出場を決めた。
千葉・市原合宿に入っていた浦安DR一同は、歓喜の瞬間をチームで見届けた。次は自分たちの番だ。しかし栄光の瞬間へ向けた研鑽は、着実に、一日一日だ。