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第45回 NTTラグビー全国大会「特別なノーサイド」
◇第45回 NTTラグビー全国大会
◇浦安DR 61-19 RH大阪(2023年10月29日@浦安Dパーク)
浦安の空にノーサイドの笛が響いた。
守り切った。熱戦は61-19で浦安D-Rocks(浦安DR)に軍配。最終盤はNTTドコモレッドハリケーンズ大阪(RH大阪)の猛攻に耐え、ハンドリングエラーを誘った。これで2シーズン目がスタートして2連勝だ。
先発したPR金廉は、解けていく緊張を感じながら、ノーサイド後のピッチを踏みしめた。澄んだ秋空の下、仮設バッグスタンドの前に「仲間」と整列する。下げた頭を持ち上げると、関係者からの拍手が降り注いだ。
浦安DRの選手・スタッフにとって、そして元RH大阪の金廉にとって、この日の「仲間」は多かった。RH大阪の選手一人ひとりと握手をしながら、試合後挨拶のサイドを入れ替える。握手をしていると、苦楽を共にした戦友たちの顔が次々に現れた。
自然と、笑みが溢れた。
「スイッチを入れて試合はやりましたが、終わってしまえば仲間です。苦楽を共にした人たちなので『久しぶり!』と。今日は、いつもの公式戦のノーサイドよりは、一体感のあるノーサイドだったと思います」(PR金廉)
NTTラグビー全国大会。1977年に始まったラグビー交流は45回目を迎え、メインマッチとして浦安DRとRH大阪の一戦が行われた。
浦安DRのLOヴィンピー・ファンデルヴァルト。2013年にRH大阪に加入しており、NTTグループチームは在籍11年目。大会の価値を知る34歳は、今日の一戦を「勝たなければならないダービーマッチ」と表現した。
旧知の仲間が多いチーム同士。この日の元NTTコミュニケーションズ選手は唯一先発のSH光井勇人をはじめ小泉将、石井勇輝の3人。しかし今季NTTリーグワンではD2(ディビジョン)で順位を争う相手でもある。
「キャプテンの蓮(SH飯沼)を含めて試合前に『スイッチを入れるところは入れよう』と話していて、そこはしっかり切り替えることができました」(PR金廉)
浦安DRのスイッチは確実に入っていた。
2本のトライで5点リード(12-7)を奪っていた前半20分過ぎだ。
相手投入ラインアウトでLOファンデルヴァルトが相手ボールをカットした。また確保されたが、元RH大阪のLOローレンス・エラスマスが「ジャッカル」で攻撃権を奪取。守護神として、古巣相手に立ちはだかった。
試合展開では、序盤の混戦模様をフォワードの組織力で盛り返した。
HO藤村琉士が2本のモール・トライ(前半19、25分)を決め、スクラムでもプレッシャー。19点リード(26-7)の前半33分には8人のプッシュでペナルティを奪った。
「(スクラムは)フォワード8人が自分たちにフォーカスして、全力で押し続けることに注力できました。ペナルティもありましたし、スクラムは成果だったと思います」(PR金廉)
バックスの決定力もあった。
圧巻はWTB石井魁。前半39分にハンドオフから独力でこの日自身4本目。後半最初のモール・トライもWTB石井のキックチェイスが敵陣攻撃の端緒。攻守に高品質のプレーを続け、61-19の快勝に貢献した。
プレシーズン初戦の課題だったカードはゼロ。ただ疲労度の高い最終にペナルティが増え、
結果的に前半「6」だったトライ数は後半「3」に半減。後半だけのスコアは「21-12」と接戦に持ち込まれた。
それでもスイッチを入れたまま、力強くフィニッシュした。
後半39分のチーム9トライ目。途中出場の小島佑太が、古巣RH大阪を相手に強烈なぶちかまし。豪快にインゴールを奪った。
最終盤にはペナルティから自陣22m内に居座られた。RH大阪がしぶとくフォワードを当ててくる。浦安DRは芯を衝くタックルで応戦する。どちらの側か分からない鬼気迫る声が響き続け――、最後はホイッスル。
激しいディフェンスで、インゴールを死守した。
「本当にタフなゲームでした。手こずりましたが、試合に進むにつれて勢いが生まれました。今後(D2での)2回の対戦も、しっかりと勝ち切ります」(LOファンデルヴァルト)
南アフリカ出身初の日本代表であり、4年前のW杯日本大会では初の8強入りに貢献したファンデルヴァルト。必勝の決意をそう語ったが、ノーサイド後の表情は柔和そのものだった。
「ハリケーンズ(RH大阪)には親しい友達もたくさんいます。試合では本気でタックルをぶちかましますが、試合後は仲直りして、楽しい時間を分かち合います。それがラグビーです」(LOファンデルヴァルト)
試合後の記念撮影。
激闘を繰り広げたピッチに「仲間」が集った。これぞラグビー。何もかもが解け合った幸福が広がっていた。