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2023-24プレシーズンマッチ第1戦「チャンスへの執念」
◇2023-24 プレシーズンマッチ第1戦
◇浦安DR 40-17 BL東京(2023年10月21日@浦安Dパーク)
穏やかな表情が並んでいる。秋晴れに恵まれた浦安Dパーク。約1300人を収容する9月設置の仮設スタンドは、午後2時のキックオフを待つ観客の活気に溢れている。立ち見が出るほどの盛況だ。
浦安D-Rocks(浦安DR)の2023-24シーズン。
本格始動を告げるプレシーズンのトレーニングマッチ初戦。本拠地・浦安に迎えた強敵は、昨季ディビジョン1(D1)で5位だった東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)。「接点無双」を掲げる雄々しい伝統チームに、ここまでの積み重ねをぶつける。
午後2時、涼風が吹きわたる青空に笛が鳴り、チーム2年目初の対外試合が始まった。
と、ほぼ同時に、青空にポンポンという大きな破裂音が。ただの偶然か、この日4年振りに開催された「第41回浦安市花火大会」の事前の号砲が鳴った。そんな幸先の良いスタートは、直後の試合も同様だった。
浦安DRのディフェンスの出足が速い。一気に詰める。ズドンと刺さる。今季フォーカスしてきた「ディフェンスのラインスピード」で、D1チームと真正面からやりあっている。
序盤の防戦を、しのいだ。
すると前半5分だ。敵陣で最初のチャンス。FW戦からのシンプルな突進。衝突したLO小島佑太が身体を伸ばし、インゴールにねじ込んだ。昨季入替戦出場を逃し、悔しい思いをした男がシーズン最初のトライを奪った。
「今日は特別なことはせず、僕はFWなのでシンプルにコンタクトして前に出ることを意識しました。チームとしては2年目なので、去年よりもラグビー的なところが早く始まり、去年より結束してプレシーズンに臨めています」(LO小島)
さらに5分後(前半10分)、2度目の得点機がやってくる。
WTB石井魁が、内返しのオフロードパスをもらってゴール下へ。またも絶好機で獲り切り、古巣のBL東京を相手に2本目。高い連携力から12-0とリードを広げた。
反転攻勢するBL東京だが、前半16分、昨季はなかなか出場機会に恵まれなかった先発FLブロディ・マカスケルが、飛び込むような守備でトライを防ぐ。チームも、個々人も、チャンスをものにしようとする意欲に溢れていた。
昨季は、入替戦というチャンスを活かせずに終わった。
創設1年目ながらプレシーズンから17戦無敗。しかし入替戦初戦でチーム初の黒星、そして連敗を喫して昇格を逃した。2戦合計5枚のカードが痛恨となり、チャンスの女神の前髪は通り過ぎていった。
連戦連勝の一方で、次第にルールブックに則った正確性が落ちていった。何かを得れば、何かを失う。それは分かっていた。だから「勝って反省する」作業を繰り返していたが、至らなかった。ラグビーという難題は、浦安DRに不足という結果を叩きつけた。
今季より選手からスタッフになった西橋勇人アシスタントマネージャーは、昨季を振り返り、チームとしての決意を語った。
「結果が出なかったことが全てです。今シーズンは課題になった反則を改善するために、スタッフを含めてグラウンド内外の規律をもう一度見直しています。具体的にはルールブックの作成。クラブハウス内でのルールから、遠征時の服装まで、改めて文字に起こしました。」
プレシーズンの初陣を迎えるまで、チームは足元を見つめ続けていた。
試合は12-12の同点で迎えた後半1分、最初の得点機で、またも一発でモールから獲った。この日の浦安DRの試合登録メンバーは38人。めまぐるしく選手が交代する中には、みずから試合出場という名のチャンスを呼び込んだ男もいた。
今季ナンバーエイトからプロップに転向した坂和樹だ。
「フロントローは自分の強み(フィールドプレー等)をもっと活かせる場所だと思っています。同期の柊平(PR竹内)に『一緒に1番と3番で試合に出ようよ』と言われたこともあって、昨シーズンの終わりにチャレンジを決めました」
初挑戦のプロップとして迎えた人生初の対外試合、そのファーストスクラムは、19-17で迎えた後半10分にやってきた。
3番プロップには「一緒に出よう」と誓ったPR竹内柊平。最前列中心はHO藤村琉士。強烈なヒットから仕掛け、押し込んだ。笛が響き渡り、会心のペナルティ。プロップとして初めての感覚を、噛みしめた。
このペナルティから敵陣に入るとWTBラリー・スルンガが4本目。またも敵陣での攻撃機会を得点に変えた。後半17分の5本目も一連の流れから奪取。自陣スクラムから攻守交代を経て、3人のFW(LOヴィンピー・ファンデルヴァルト、HO藤村、PR坂)が巧みにパスを繋ぎ、FL佐藤大樹のトライで観客席の歓喜を呼んだ。
さらに1トライを奪って40-17で終戦。
チャンスを確実に得点に変える集中力、執念が、40得点の大台に繋がったのだろう。終盤2枚のイエローカードはあったが、初戦はミス・反則が多くなりがちだ。「今日はチームとして『チャレンジしよう』と決めていた」(PR坂)こともある。
D1の東京サントリーサンゴリアスから「新しいチャレンジがしたかった」と今季移籍してきたSO田村熙。
この日明治大学の後輩で「間違いなく能力は高い」と評価するSH飯沼蓮主将とハーフ団を組み、チーム初出場を飾った。大外への正確なキックパス、ロングパスで何度も好機を演出した司令塔は、D1昇格に必要な「何か」を毎日見ていくつもりでいる。
「(浦安DRは)能力の高い選手がいて、きつい練習もやっているので、前向きに進んでいくとは思います。ただ(入替戦で)勝てない理由は絶対にあると思います。今日は結果としては良かったですが、最後に勝つために、目の前の結果以外のところも見ていきたいです」
照準はあくまで入替戦。最後に勝つための「何か」を探し求め、血肉に変えていく。