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2022-23入替戦 第1戦「未来へ続く敗戦」
◇NTT ジャパンラグビー リーグワン2022-23 D1/D2入替戦 第1戦
◇浦安DR 14-36 花園L(2023年5月7日@宮城・ユアテックスタジアム仙台)
東北地方最大の都市、「杜の都」宮城県仙台市。その中心街から地下鉄南北線で北へ約15分。終点の泉中央駅に、入替戦ファーストラウンドの会場、ユアテックスタジアム仙台はあった。
入替戦。
そこは全員で目指してきた場所だった。
2022年8月25日に始動した浦安DRは、傷心を経験した者が少なくなかった。古巣を離れた者。ディビジョン2(D2)降格を味わった者。そんな人びとがヨハン・アッカーマンHC(ヘッドコーチ)の下、一枚岩になることを目指した。
「コロナ禍で選手や家族が集ることが難しい中、合宿やファミリー・デイを設けるなどして、家族を含め、チームの文化を高めてきました」(アッカーマンHC)
指揮官が「厳しい試練を乗り越える経験も大事にしている」と語った通り、日々の練習は過酷だった。共に汗を流し、結束は次第に高まった。才能に頼らない結束力、培ったタフさこそが、公式戦12連勝を支えてくれた。
もう後戻りはしない。仙台湾に注ぐ七北田川(ななきたがわ)を渡った先、小雨の降るユアテックスタジアム仙台で、ディビジョン1(D1)で12位だった花園近鉄ライナーズ(花園L)と対峙した。
ホストを務める浦安DRは、勝負のメンバーを組んだ。
スタメンはD2優勝を決めた三重ホンダヒート戦から、5人の変更を加えた[i]。
FL(フランカー)ジェームス・ムーアは第2節以来、FB(フルバック)イズラエル・フォラウは第3節以来の先発。そしてHO(フッカー)三浦嶺が第7節以来のスターターを務め、この日スローワーとしてラインアウトの安定に貢献した。
「序盤は良いスタートを切り、得点を取ることができました」(アッカーマンHC)
いきなり敵陣で16次攻撃。直後のラインアウトモールでインゴールに雪崩れ込んだ。
反則によりトライはキャンセルされたが、CTB(センター)サミソニ・トゥアの突進から、SH(スクラムハーフ)飯沼蓮キャプテンが左隅へ。ゴールも成功。
幸先良く、開始5分で7点を奪った。
しかし暗雲が垂れ込める。反則を重ねてエリアを後退。前半11分、14分に連続トライを奪われて5点(7-12)を追いかける展開に。スクラムでもペナルティを重ねた。
PR(プロップ)竹内柊平は、苦戦したスクラムをこう振り返った。
「(花園L戦へ向けては)一人ひとりで組まず、8人で組むことに取り組んできました」
「今日は押したり押されたりで、自分たちのディテールが崩れ、ペナルティに繋がったと思います」(PR竹内)
さらに前半27分、37分にはイエローカード。14人で戦う苦境が続き、前半終了前には花園Lに1トライを追加される。
前半40分間のスコアは12点ビハインド(7-19)。浦安DRは公式戦で初めてリードされ、ハーフタイムを迎えた。
まだ2トライ差だ。浦安DRは後半に反撃を試みた。しかし14人の後半5分にモールを起点に4トライ目を取られる。点差が「19」に広がる。
50分、後半初めて敵陣奥に侵入。
しかし雨でボールが滑る。要所でのノックオンが続く。後半17分にはスクラムを再三崩したとして3枚目のイエロー。ここで花園LのPG成功により、点差は「22」に。
途中出場したSHグレイグ・レイドローは語った。
「今日はプラン通りにいかない日でした。自分たちに非があると思います」
「良いスタートは切れましたが、自陣に釘付けになりました。こうした雨の試合は、ペナルティ・カウントとエリアが重要です。そこを上手くマネジメントできませんでした」
後半27分には得意のジャッカルで貢献したNO8(ナンバーエイト)リアム・ギルが、相手キックをチャージ。FBフォラウのトライに繋げたが、残り5分で1トライを奪われた。万事休す。そのまま無念の瞬間を迎えた。
入替戦の第1戦は、22点差(14-36)で敗れた。
負けた時にどう振る舞うのか。何を語るのか。指揮官は、チーム史上初の敗戦後、感謝でコメントを締めくくった。
「残念な結果でした。序盤は良いスタートを切り、得点を取ることができましたが、ライナーズさんはテリトリーを上手くとって戦ってきました。一方で自分たちは(前半に)イエローカードが2枚ありました」
「今日はセットピースも苦しみました。また、ボールのバウンドの方向など、すべての物事がうまくいってないように思えた時もありました」
「その中でも、チームのために闘い続けてくれた選手たちに感謝しています。あとは自分たちのやってきたことを信じて、先に進むだけです」(アッカーマンHC)
これまでは「勝って反省する」という難しい作業を繰り返してきた浦安DR。チーム誕生後、初めて敗戦を喫したチームは、我々にどんな姿を見せてくれるのだろうか。
この日は、ハーフタイムにも初めての光景があった。
後半開始直前、観客席から「ディーロックス!」のチャントが沸き起こったのだ。息を合わせた「ディーロックス!」の声援は、塊となってスタジアムに轟いていた。
岩石とは、一つの物質による均質な塊ではない。多様な鉱物が無数に集まった集合体だ。
全ての人の力を合わせ、掴み取ろう。
共に、信じ、戦おう。
「結果が決まったわけではありません。どれだけ準備できるかで、未来は変わってきます」(SH飯沼主将)
未来が待っている。決戦の舞台は、5月13日(土)、東大阪市花園ラグビー場だ。
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[i]PR庵奥 翔太/HO三浦嶺/ジェームス・ムーア/CTBトゥクフカ トネ/FBイズラエル ・フォラウ