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2022-238節「リスペクトの証」

NTT ジャパンラグビー リーグワン2022-23ディビジョン28

◆浦安DR 9219 釜石SW2023312日@岩手・釜石鵜住居復興スタジアム)

日本有数のラグビータウン、「鉄と魚とラグビーのまち」岩手県釜石市。

この地にあった「北の鉄人」新日鐵釜石ラグビー部は、197080年代に日本選手権7連覇を達成。ラグビーワールドカップ(W)2019日本大会では、全国12の開催都市の一つになった。

ディビジョン2(D2)7戦全勝の浦安D-Rocks(浦安DR)は第8節、チームとして初めて釜石の地に立った。南アフリカ出身のヨハン・アッカーマンHC(ヘッドコーチ)にとっても初めての訪問だった。

「釜石の人びと、街が、メッセージを持っていました。その様子から、ここはラグビーコミュニティだと思いました」

「規律正しく団結し、困難を乗り越えようとする、日本の人びとの強さを感じました」(アッカーマンHC)

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どうすれば人間は強くなるのか。その問いと常に向き合ってきた世界的指導者は、敏感に感じ取った。釜石に、日本に生きる人びとの強さをみた。

リスペクトの念がこみ上げた。

「私たちは、かつて大きな災害があった日(311)の翌日にプレーすること、そして対戦相手に敬意を払った上で戦う、という心構えで試合に臨みました」(アッカーマンHC)

浦安DR312()、「北の鉄人」の歴史を受け継ぐ5(16)の釜石シーウェイブスと対峙した。

会場は釜石鵜住居復興スタジアム。

12年前に被災した小中学校(鵜住居小学校、釜石東中学校)の跡地に建てられ、W杯日本大会ではフィジー×ウルグアイの1試合を開催。

自然と調和したスタジアムの裏手には「釜石ラグビー神社」もある。たくさんのメッセージが書かれた絵馬の中には「浦安D-Rocks D2優勝&D1昇格」の願いもあった。

祈りに満ちたスタジアムに、ビジターチームとして登場した浦安DR。

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チームを代表する23人の中には、チーム初キャップを飾った2人、日米ハーフのFL(フランカー)マッケンジーアレキサンダー、元帝京大学キャプテンのCTB本郷泰司の勇姿が。

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キックオフ直前には黙祷が捧げられた。

2011311日。

22000人以上が犠牲となった東日本大震災が発生。福島第一原発事故の影響などで、今も約31000人が避難生活を送っている。

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そして午後15分、「北の聖地」にキックオフの笛が鳴り響いた。

情熱的なファースト・スクラム(前半1)だった。

スクラム開始前。LO(ロック) 小島佑太が鬼の形相で「ファースト・スクラム!」と発破を掛けている。尋常ではない覇気だ。

理由があった。

「ここまでセットプレーの安定性が課題でした。今日はスクラム、特にファースト・スクラムにフォーカスしていました」(PR竹内柊平)

ファースト・スクラムで優位に立てば精神面で優位に立てる。レフリーの印象を左右する可能性すらある。そんな重要な1本目のスクラムで――相手がペナルティ。竹内は咆えた。

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「釜石シーウェイブスさんは8人でまとまって組んでくるスクラムが特徴的。良いスクラムを組んでいる分析があったので、そこを上回って制圧しようとしました」(PR竹内)

浦安DRは序盤から、制圧した、と表現してもよいプレーを続けた。

スクラム、ラインアウト、そして第5節の前回対戦でも制圧したブレイクダウン(タックル成立後のボール争奪戦)で実力を示した。

攻撃の基盤を築いた浦安DRは、開始10分間で3連続スコア。

それもラインアウトモール、インターセプト、フェーズ攻撃という、3種のトライパターンでフィニッシュ。守備においても自陣ゴール前の窮地において、攻守交代を連発した。

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前半41分、前半7本目になるはずだったスクラム・トライはノックオンで取り消されたが、FLジミー・トゥポウがこじ開けて7本目。前半を450で終えた。

リザーブ8人が全員出場した後半も、浦安DRの勢いは衰えず。

シンビンで相手が14人だった後半10分。

自陣から8本のショートパスを繋ぐ、美しい突破劇を披露。9本目のパスでこの日プレイヤー・オブ・ザ・マッチを受賞したCTB(センター)シェーン・ゲイツが、後半3本目を決めた。

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釜石SWも後半最初、最後を含めて3トライ。青空に応援の大漁旗がなびいた。

しかし浦安DRの後半のトライ数は前半と同じ7本。課題の一つだったスクラムの一貫性も「ディテールにこだわった良いスクラム」(PR竹内)で、メンバー交代後もプレッシャーを与えた。

なぜ後半もプレー精度が落ちなかったのか。

チームのバイス・キャプテンを務める竹内柊平の言葉に、ひとつのヒントがあった。

「今日は特別な試合でした。試合前に歴史ある釜石の街を歩いて、ここでラグビーをやっているのは当たり前じゃない、ということを感じました」

「今日はプレーで圧倒することが釜石へのリスペクトだと考えていました。それをチーム内で話して、全体で共有できていました」

リスペクトを80分間、全力のプレーで表現する。

浦安DRは表現し切った。10(FW4人・BK6)がトライゲッターとなり計14トライ。今季最多となる92得点で8勝目を挙げた。

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指揮官も及第点の出来だった。

「今日はスタートから良かったです。課題だったセットピース(スクラムやラインアウト)も改善されました。80分間精度が高かったので、パフォーマンスには満足しています」(アッカーマンHC)

ビジターゲーム3連戦のラストを完勝で締め、全勝で首位をキープ。

次節の日野レッドドルフィンズ戦は中止が決まっており、次戦は2週後の326()、リーグ最終第10節。

勝点5(8節終了時)2位につける三重ホンダヒートとの、首位攻防戦だ。

そして4月からD2上位3チームでの順位決定戦(1チーム2試合)がスタート。その先にいよいよD1チームとの「運命の入替戦」が待つ。

D2優勝&D1昇格へ。

闘いは終盤戦に突入する。このままシーズンという80分間を、全員で戦い抜く。

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