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2022-237節「砕けぬ一枚岩」

NTT ジャパンラグビー リーグワン2022-23ディビジョン27節 

◆浦安DR 590 江東BS202334日@東京・江東区夢の島競技場)

まさかのインターセプトだった。

31点リードの後半6分。相手の10番にインターセプトを食らった。攻撃の最中、すれ違いざまにパスを奪われ、突如として失点の危機が訪れた。

ここで「誰か止めてくれ」と願うのか。それとも「俺が止める」と歯を食いしばり、切り返し、後方へ全力疾走するのか――。

浦安D-Rocks(浦安DR)はその場の全員が、後者だった。

周囲にいたSH(スクラムハーフ)飯沼蓮キャプテン、WTB(ウイング)石井魁、FL(フランカー)繁松哲大、FB(フルバック)ラリー・スルンガ・・・。

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全員がタフな道を選び、穴を塞いだ。

「今日は最後まで守り切ったディフェンスが素晴らしかった。一番光ったのは、ラインブレイクがあったときに戻る気持ちでした」(ヨハン・アッカーマンHC)

6戦全勝で迎えた第7節は、今季初となる2戦連続のビジターゲーム。相手は4(24)の清水建設江東ブルーシャークス(江東BS)だ。

会場は、穏やかな陽気に包まれた東京・夢の島競技場。バックスタンドの向こう側には複数の橋梁がある。手前の大きな一本は京葉線の鉄道橋だ。

春の気配を感じる午後2時半。白のセカンドジャージーに身を包んだ浦安DRが入場する。

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前節からは先発7[i]を変更。7人の中には怪我を克服し、この日チーム初キャップを飾った2人もいた。

職人の技が光るHO(フッカー)三浦嶺、多芸多才なPR(プロップ)セコナイア・ポレだ。 LINE_ALBUM_20230304_vs Koto Blue sharks_230307_10.jpg

「今日一番狙っていたのはディフェンスの面です」(アッカーマンHC)

この日はディフェンスにフォーカスしていた。

ディフェンスは、良いタックルから正のサイクルが始まる。試合週、ディフェンスコーチのローリー・ダンカンは、タックラー2人で協働する「ダブルタックル」を重点的に指導した。

このタックル局面で、チームを牽引する身長2メートルのフランカーがいた。 LINE_ALBUM_20230304_vs Koto Blue sharks_230307_9.jpg

ここまでロックで起用されてきた29歳のローレンス・エラスマス。指揮官が「機動力が落ちない」と信頼を寄せる南アフリカ出身の巨人だ。

「フランカーはNTTドコモレッドハリケーンズ大阪時代や、スーパーラグビーの準々決勝、準決勝でも(南アチーム・ライオンズ)でプレーしたことがあります。久しぶりでしたが、違う役割を楽しみました」(FLエラスマス)

7点リード(70)で迎えた前半25分だ。

ここまで好守を続けていた江東BSが反撃。白ジャージーの軍団は7次攻撃を浴びていた。そして8次攻撃目。エラスマスが芯を突く強烈タックル。金嶺志も絡み、落球を誘った。

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「自分の前にきた相手は誰も通さない、圧倒する、という意識でタックルをしています」(FLエラスマス)

江東BSもディフェンスは光っていた。

社員選手が多い江東BS。ペナルティゴールで3点を狙うチャンスもあったが、果敢にトライを狙った。

しかし前半29分のイエローカードで均衡が崩れ、14人の間に浦安DR2トライ。

前半42分にはウイングで初先発のシェーン・ゲイツが、キックの再獲得から4本目。ゲイツのウイング起用が的中した格好となり、240で試合を折り返した。

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誰か一人でも欠けていたら、この日の「ゼロ」はなかったろう。

FL繁松哲大も、その欠かせなかった一人に違いない。

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スクラムの反対側にいた長身フランカーとは好対照の身長178センチ、しかし抜群の運動量、敢闘精神で鉄壁に貢献する明治大学出身の24歳だ。

後半2分には、FL繁松の落球を誘うディフェンスでスクラムが到来。ここから大学の1学年後輩であるSH飯沼キャプテンが独走トライを決め、充実の後半は始まった。

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前半一時退場もありながら不屈のFL繁松は、後半6分のインターセプトではジャッカルを試み、相手の反則を誘発。その3分後には狙い通りのジャッカル。守護神のように立ちはだかった。

チーム最大のピンチは、後半14分からの10分間だったろう。

FLエラスマスがハイタックルで10分間の退場。その直後、浦安DRは自陣ゴール前で怒濤の攻撃を受けた。

ここで元フランカー、途中出場のフッカーがヒーロー的に登場する。金正奎が頭をねじこみ、絡みつく。そして後半14分、レフリーの笛が夢の島に響いた。

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浦安DRには複数の守護神、ラックサイドの門番がいる。かくして浦安DRの"失点ゼロ行進"は続いていった。

数的不利の浦安DRだが、後半20分にはモールトライを奪取。3分後にはCTB(センター) トゥクフカトネの個人技で連続トライ。14人で2トライを奪う攻撃力も見せた。

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不利な状況になっても、辛抱強く戦う。

安易な選択に逃げず、全員でアタックを続ける。

この試合でチームは一歩前に進んだ――それがSH飯沼キャプテンの実感だった。

「相手の良いディフェンスに対して、焦らずアタックし続けようと話しました。その通りスコアを溜めていけたことは自信になりますし、一歩成長できたところです」(SH飯沼キャプテン)

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後半の得点は、前半を11点上回る35得点。9トライ59得点は前節とまったく同じ。ただ大きく異なる点は、失点だった。

「今日は相手にチャンスを与えつつも、最後まで守り切りました。今日のディフェンスは素晴らしかったと思います」(アッカーマンHC)

一般的にゼロは「何もない」という意味だ。しかし34日に浦安DRが記録したゼロには、豊かな意味があった。

80分間のハードワーク。コネクションの継続性。チーム一丸の絆・・・。豊穣な意味の詰まったゼロだ。

202334日。

浦安DRは砕けぬ一枚岩を創り上げ、チーム史上初の完封勝利を記録した。

次節は北へと向かい、チームとして初めて東北の地を踏む。そして大切な日の翌日、312日に、釜石シーウェイブスと相まみえる。

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[i]PR西川和眞/HO三浦嶺/PRセコナイア・ポレ/LO小島佑太/NO8リアム・ギル/CTBトゥクフカトネ/FBラリー・スルンガ