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2022-236節「青空の覇者」

NTT ジャパンラグビー リーグワン2022-23ディビジョン26節 

◆浦安DR 5912 S愛知(2023226日@愛知・パロマ瑞穂ラグビー場)

雲一つないとは、まさに、226日の瑞穂の空だった。

ただ青空の中には、強い風が渦巻いていた。

試合前、浦安D-Rocks(浦安DR)のヨハン・アッカーマンHC(ヘッドコーチ)はパロマ瑞穂ラグビー場を見渡し、風の強弱を確かめた。

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視線をバックスタンドの最上段にやる。リーグワンのフラッグが激しく棚引いている。強風はこの球技場の名物だという。

この強風だ。バックボールは難しいだろう――。

 

南アフリカ代表のロック(LO)だった指揮官は、そう感じた。

ラインアウト後列での獲得を狙う「バックボール」は、特に風の影響を受けやすい。となれば、今日のラインアウトは、風の影響が少ない"前列"での争奪がメインになるだろう。

前列のラインアウト・ディフェンスを担当する一人は、背番号4の28歳。

金嶺志だ。

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「今日は風が強く、バックボールが難しい状況でした」

「選手たちは、相手が後ろをあまり狙わないだろうと読み、しっかり空中戦で競っていた。特にリョンジ(金嶺志)が上手にやってくれました」(アッカーマンHC)

10試合あるリーグ戦の折り返しとなる、ディビジョン2の第6節。

5戦全勝の浦安DRは、快晴の愛知・パロマ瑞穂ラグビー場で、3(32)の豊田自動織機シャトルズ愛知(S愛知)と対峙した。

みずみずしい蒼穹の下、ビジターの浦安DRが入場する。

まずリーグ通算50キャップとなったWTB(ウイング)石井魁がピッチへ飛び出す。チームの隊列には、この日リーグワンデビューを飾った生粋の司令塔、松尾将太郎の背中もあった。

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浦安DRの先制トライは、ラインアウトのディフェンスが発端だった。

前半2分にLO金嶺志がスチール(ラインアウトでボールを奪うプレー)。一連の攻防からWTBラリー・スルンガが、キックの再獲得から先制点を奪った。

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この先制トライを含め、浦安DRは前半5トライ。そのうちラインアウトを起点とするモール・トライは2本あった。

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前半のラインアウト成功率は78%。強風の中で9回中7回を成功させ、前半28点リード(335)の土台を築いた。

圧巻だったのは、後半のラインアウト・ディフェンスだ。

タッチラインから投入されるボールの争奪戦「ラインアウト」――。

それはいわば、肉体を駒とする頭脳戦だ。

攻撃側は「誰を」「いつ」「どのように」リフトすればボールを確保できるか、知恵を絞る。

防御側も知恵を絞る。ミラーリング(鏡のように相手と同じように動く)をしながらジャンパーを飛ばし、空中に障害物を造り上げる。

チームはS愛知戦に向けて、そんなラインアウトの精度向上に取り組んできた。金嶺志が言った。

「これまでラインアウトのディフェンスが課題で、ここ2週間はそこにフォーカスしてきました」

「コーチ、リーダーを含めてしっかりシステムを落とし込みました。コーチの指導には時間制限があるので、選手同士でもご飯を食べながら話し合ったりして、補いました」

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味方の動きにも歩幅、スピード等の個人差がある。だからラインアウトには微調整、意思統一が欠かせない。

一回のラインアウト、一回のジャンプは、試合という表舞台に突き出ている氷山の一角だ。その水面下には意思統一のための膨大なコミュニケーション、下準備がある。

後半の浦安DRは、不利な風下ながら3トライ。さらにリードを40(5212)に広げていた63分。

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相手投入のラインアウトで、LO金嶺志がこの日3度目のスチール。直前のラインアウトでは競らずにモールで勝負しており、相手にとっては不意打ちだったかもしれない。

立て続けに1分後(後半24)

前を避けたのか"バックボール"で勝負した相手に対し、今度はNO8(ナンバーエイト)タイラー・ポールがこの日初スチール。予測、準備が的中していく。

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相手の後半のラインアウト成功率は50%。後半の浦安DRLO金嶺志、NO8ポールの2人で5回のスチールに成功した。

「相手の特徴、癖をシミュレーションした上で、今日は臨機応変に対応できました」(LO金嶺志)

金嶺志や、ラインアウトのサイン・コールを担当したLOローレンス・エラスマスだけではない。

後半5度目のスチールをリフトで支えたリザーブ組の金廉、リアム・ギルなど、総力戦で空中戦を制した。

3節の前回対戦では39点差(5516)だった。この日はラインアウト・ディフェンスの貢献もあり、スコアは47点差(5912)で決着。

浦安DRは全勝キープで、D2首位を守った。

「前半は良いスタートを切り、ミスもありましたが、確実にチャンスを得点に繋げられていました」

「後半に関しては、最後まで自分たちのスタンダードを貫こうとチームに話し、大部分は出来ていました」(アッカーマンHC)

大量リード後に失速する課題があった後半は「いつもより良いスタンダードでした」(SH飯沼蓮キャプテン)。ここでもひとつ、修正が加えられた。

全勝街道は続いているが、浦安DRは勝ち方にもこだわる。全員で叶えたい目標があるからだ。

きっと悲願達成への一足飛びのジャンプはない。水面下で、表舞台でトライ&エラーを繰り返しながら、今日の一歩を刻んでいく。

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