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2022-235節「制圧した局地戦」

 

NTT ジャパンラグビー リーグワン2022-23ディビジョン25

◆浦安DR 6426釜石SW2023211日@東京・駒沢オリンピック公園陸上競技場)

試合前日は、東京に大雪警報が出ていた。ホストゲーム会場となる陸上競技場のピッチは、まるで雪原。会場スタッフはしんしんと降りかかる雪の中、かじかむ手と格闘しながら、今季3度目のホストゲームの準備を進めた。

明くる土曜日。

駒沢の空は澄み渡り、ピッチには温かい日射しが注いでいた。公募で『JALドリームスカイマッチ』と銘打たれた第5節、開幕4連勝で暫定2位の浦安D-Rocks(浦安DR)は、13敗の釜石シーウェイブス(釜石SW)を迎えた。

冬晴れの下、浦安DRが入場。今季初出場となる4[i]を含めたメンバー23人に油断はなかった。花道で日本航空(JAL)のスタッフ、客室乗務員の方々に見送られた浦安DRには、意思統一があった。

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「釜石シーウェイブスさんはチャレンジしてくると思っていました。そこで受けるのではなく、チャレンジしようと。前半はハングリーに良いラグビーができました」(浦安DRSH飯沼蓮キャプテン)

前半から、チームとして矜持のあるブレイクダウンで実力を示した。

「ブレイクダウン」とは、一般的にタックル成立後に起こるボール争奪戦。

攻撃側はボールを奪われまいとする。守備側は奪おうとする――。人間の目は動くボールを追いかける。それゆえ目立たぬ地表近くの攻防だが、しかし極めて重要なこの局地戦を、浦安DRは開始直後から制圧した。

序盤のピンチでは両FL(フランカー)が存在感。

FLタイラー・ポールが相手8番を押し戻し、ターンオーバー。14点リードの前半9分には「狩人」FLリアム・ギルがジャッカル成功。司令塔のオテレ・ブラックら、バックス陣のファイトが起点となる攻守交代もあった。

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圧巻は、攻守交代が起点となった前半21分の「100メートル・トライ」。

8番ジミー・トゥポウのシンビン(10分間の一時退場)14人となったが、HO(フッカー)金正奎、LO(ロック)小島佑太の連続タックルから攻守が逆転。ここから約100メートルをカウンター。万能スピードスターのFB(フルバック)安田卓平がチーム4トライ目を奪った。

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「全体的にブレイクダウンは良かったです。アタックでは、精度の高いブレイクダウンでクイックボールを出すことができました。ディフェンスのブレイクダウンも素晴らしかった」(浦安DR、ヨハン・アッカーマンHC)

しかし後半に課題は残った。

前半を380で終えた浦安DRは後半、勢いが衰えた。

後半開始直後、いきなり釜石SWにトライを奪われる。その後3連続トライを返すが、粘り強い釜石SWの抵抗にあう。アッカーマンHC(ヘッドコーチ)は「プレーの強度が落ちている」と感じた。

勝利にも質を求める指揮官は、「私たちは後半にプレーの強度が落ちてしまうところがあり、それはシーズンの課題です」と語った。

「(原因は)メンタルの部分が大きい。強いチームは(勝利濃厚でも)ペナルティゴールで3点を取りにいったり、コーナーに蹴ってそこからモールで押し込んだり、容赦ない点の取り方ができます。プレッシャーをかけ切れなかった部分は成長しなければなりません」(アッカーマンHC

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明るい材料もあった。

後半リザーブから次々に登場した途中出場組だ。

HOフランコ・マレーはジャッカルから後半2トライ目を演出。PR(プロップ)金廉も強烈タックルを浴びせ、ターンオーバーの契機を複数回つくった。

そして、2週間前にあった静岡ブルーレヴズとの練習試合(5250で勝利)を経験し、この日先発PR庵奥翔太と共にリーグワンデビューを飾った3人も、思いきり駆けた。

今季導入のアーリーエントリー制度の第1号となった小西泰聖(早稲田大学4年)

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明治大学時代は不動のナンバーエイトだった4年目の坂和樹。

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7人制日本代表で共同キャプテンも務めた6年目の石井勇輝の3人だ。

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試合は終盤に、釜石SWが見事なカムバックを見せた。

浦安DRはロスタイムの45分、後半4トライ目を浴びる。それ以前にボールを蹴り出して試合を終わらせるチャンスはあったが、有終の美を目指し、攻め続けた末の被弾だった。

ただ最後までブレイクダウンは堅調。この日チーム最後のターンオーバーは、チームの翼、トライゲッターであるWTB(ウイング)石井魁のジャッカルだった。

「チームとしてブレイクダウンにはプレッシャーをかけています。今週のテーマでもありました。皆さんに何かを感じてもらえるようなブレイクダウンだったなら、体現できていたのかなと思います」(WTB石井魁)

フィニッシャーとして2トライも記録した石井魁は、プレイヤー・オブ・ザ・マッチを受賞。6426で無傷の5連勝とした浦安DRは、D2首位をキープした。

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「主導権を握りきれないところは課題ですが、ここをどう解決するのかはキャプテンである自分にとっても良い課題。しっかり考え、チームに還元していきたいです」(SH飯沼キャプテン)

これでリーグ戦は折り返しとなり、これから後半戦の5試合がスタートする。2週間後の226()には豊田自動織機シャトルズ愛知と、今季2度目の対戦が待つ。

全員でディビジョン1行きの片道チケットを握りしめている。夢見る栄冠は、今はまだ彼方。約束を果たすその日まで、全員で高く翔び続ける。

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[i]PR庵奥翔太/FLNO8坂和樹/SH小西泰聖/WTB石井勇輝