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2022-23第2節「トンネルの先の記念碑」
◇NTT ジャパンラグビー リーグワン2022-23ディビジョン2第2節
◇浦安DR 68-17 江東BS(2022年12月24日@大阪・ヨドコウ桜スタジアム)
長いトンネルが待ち受けていた。
日本列島がクリスマス寒波に見舞われた2022年12月24日。リーグ開幕戦で勝利した浦安D-Rocksは、チーム誕生後初となる公式戦ホストゲームの舞台に立っていた。
冬晴れの大阪・ヨドコウ桜スタジアムは、眩しかった。
正午のキックオフを待つピッチは、日射しを浴びてくまなく明るい。今季初先発の8人[i]、リザーブから初出場を狙う5人[ii]の表情も漲っている。ピッチ中央に広げられているのは、浦安DRのビッグフラッグだ。
チームロゴには、光を帯びた突兀(とっこつ)たる岩山が描かれている。チームはこれから険しい山の頂点を目指す。今日はその大事な一歩だ。
晴れがましい前半40分間は、LO(ロック)金嶺志のジャッカルから始まった。
1敗の清水建設江東ブルーシャークスは難敵だった。浦安DRはラインアウトモールを中心に前半3連続トライ(3、15、20分)を奪ったが、内容は接戦模様。
均衡が崩れたのは開始30分後だ。
トライを防ぐ反則によって相手にシンビン(10分間の一時退場)が出た。しかし数的優位を得ても、得点を急いでミスが増えたり、逆に結束した相手に苦戦するゲームは少なくない。
しかし浦安DRには、システムに忠実に遂行するメンタリティ、スキルがあった。相手が14人の間に奪った4連続トライ(32、35、39、42分)は、大外へのキックパスなどを起点としたスキルフルな4本だった。
と同時に、攻撃継続のためにボールを守る必要不可欠な労働者、いわばラグビーにおけるエッセンシャルワーカーの仕事も大きかった。
前半39分の6本目は、トライ一つ前のブレイクダウンにPR(プロップ)竹内柊平、逆サイドからFL(フランカー)大椙慎也が駆けつけたことで、トライに繋がるボールが出た。
前半ラストの7本目では、LOヴィンピー・ファンデルヴァルトが6フェーズで2回の突進、1回のラック参加。トライの足場作りに精を出した。
充実の前半40分間。この時点で、後半の停滞を予想した者は少なかったろう。後半開始4分にはFB(フルバック)イズラエル・フォラウがインターセプト。リードはこの日最大の53点(56-3)に広がった。
ところが、ここからチームは無得点という長いトンネルに入り込んだ。
まず突如として反則が増加。前半5回だったペナルティ数は2倍以上の13回になった。
後半に入って江東BSが攻撃場面でのブレイクダウンを修正していた。前半のように圧倒できない浦安DRは焦った。
ムードを変えたい。前半のように圧倒したい。巡ってきたチャンスでアピールしたい――。
個人優位の心理状態が広がっていく。浦安DRは主に守備場面でのオフサイド、自立せずにボールに絡むオフ・フィート(倒れ込み)などを重ねた。75分間出場のSH(スクラムハーフ)飯沼蓮キャプテンは、当時のチームの状態をこう振り返った。
「ディフェンスのブレイクダウンでプレッシャーをかける、というフォーカスがありました。そこで入りすぎてしまった。個人個人が『早くターンオーバーしたい』『もっと点を取りたい』などと思って、かけすぎてしまったと思います」(SH飯沼キャプテン)
江東BSは後半16、34分に連続トライ。いずれも浦安DRの反則が端緒だった。
「(後半)押されていたこともあって、なんとかファイトとして変えたい、という思いが強かったです。アピールしたい選手もいました」(WTB安田卓平)
アタックも律動を失っていた。前半100点ペースで得点したチームが、後半4分から約30分間は無得点。
ブレイクダウンでボールを守るエッセンシャルワーカーが減った。目立たぬチームプレーに従事する者の減少、そこに江東BSの奮闘、出足を重くする風下の不利も重なっただろう。
しかし、ラスト5分だった。
30分間にわたる無得点のトンネルを、抜け出した。
後半開始と共に投入されたフォワードの中島進護。後半35分にラック真後ろから、正確なクリーンアウトで相手を排除した。守備の一番槍として刺さり続けたFLジミー・トゥポウも貢献した。
ここから攻守交代を引き起こし、後半37分のCTB(センター)シェーン・ゲイツが9本目。同41分にはWTBラリー・スルンガがラスト10本目。先発バックスの2人が、終盤でも落ちないスプリント能力を披露した。
この時あの男はピッチにいなかった。
この試合でハットトリックを達成し、第2節終了時で今季リーグ最多4トライを記録したFBフォラウだ。
後半13分に入替となっていたFBフォラウは、チームの攻撃力を誇った。
「このチームはアタック力の高い選手を揃えています。バランスが取れており、フォワード合戦からだけではなく、バックスで勝負することもできます」(FBフォラウ)
2トライを挙げた終盤の反則はゼロだった。WTB安田は「ペナルティが減ってボールを持てればトライが取れました」と話した。反則をしなければ得点できる。意思統一されたチームに、ふたたび一体感が戻ってきた。そしてノーサイド。
長いトンネルを抜けた先には、拍手が待っていた。
そしてホストゲーム初勝利、という記念碑があった。
最優秀選手には、9本のコンバージョンを全成功させた10番クリップスヘイデンが選ばれた。
「選手たちは誇らしいパフォーマンスをしてくれました」
ヨハン・アッカーマンHC(ヘッドコーチ)は選手を讃えた。
「前半は良いトライが生まれました。全般的には良いですが、後半乱れた規律は課題です。出場機会のなかった選手にゲームタイムを与えることもでき、今シーズン戦っていく上での良い基盤を築くことができました」
浦安DRは険しい山の頂点を目指す。この日経験したトンネルも、今シーズン、来シーズンを戦っていく上での足場になるはずだ。
2022年を勝利で終えた浦安DR。2023年の初陣は2戦全勝対決。1月14日、東京・駒沢で、豊田自動織機シャトルズ愛知を迎え撃つ。
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[i] PR西川和眞/HOフランコ・マレー/LO金嶺志/FLジミー・トゥポウ/FL大椙慎也/NO8リアム・ギル/SOクリップス ヘイデン/CTBシェーン・ゲイツ
[ii] HO藤村琉士/PR・HOセコナイア・ポレ/LO・FL中島進護/LO・FLジェームス・ムーア/SHティアン・メイヤー